名古屋は独自の上のせ条例により受動喫煙の啓発に取り組む

「喫煙時の配慮義務ポスター」(名古屋市HPより)
「喫煙時の配慮義務ポスター」(名古屋市HPより)
【写真】路上喫煙に関して指導員が街頭啓発する様子

 大阪市同様に人口200万都市の名古屋市では、平成16年に制定した「安心・安全で快適なまちづくりなごや条例」に基づき、喫煙に対する啓発が着々と進んでいる。名古屋市の取り組みの特徴は、受動喫煙対策により力を入れていることだ。

「受動喫煙による健康への影響から子どもを守るため、『名古屋市子どもを受動喫煙から守る条例』(令和2年施行)を定め、市民に対して受動喫煙に関する知識の普及、喫煙者には受動喫煙防止に関する意識の啓発を行っております」(健康福祉局健康部健康増進課)

 この条例は、受動喫煙による健康への影響から子どもを守ることを重視しており、「喫煙をしようとする者は、子どもが居住する住居等の室内において、 喫煙をしないよう努めなければならない」(第5条)「喫煙をしようとする者は、子どもが同乗している自動車内において、 喫煙をしないよう努めなければならない」(第6条)といった条文が含まれている。

 また啓発活動の他、事業者と協力したパトロールも効果を上げ、たばこのポイ捨てが激減したという。路上禁煙地区に制定されている名古屋駅・栄・金山・藤が丘の4地区で路上喫煙した場合の過料が2000円と全国的に見て金額が高いことからも、名古屋市の厳しい姿勢が見てとれる。

 たばこを吸う人と吸わない人が共存できる世界を作るためには、お互いを思いやる気遣いとマナーが必要。そのために欠かせないのは分煙施設だが、この点では課題もある。名古屋市では、令和2年度から「施設の全部の場所を喫煙する場所とする屋外の分煙施設」を対象に、限度額300万円で設置経費を10割助成する取り組みを行っている。

「『屋外分煙施設設置費用助成事業』に関する問い合わせは、令和6年11月15日現在までに37件あり、うち25件が助成を受けて設置されました。市内全域で年間10件を設置目標としておりますが、目標を下回っております」(健康福祉局健康部健康増進課)

 今後の動向を見守るしかないが、出足が鈍いのが気になるところだ。

名古屋市屋外分煙施設マップ(名古屋市屋外分煙施設設置費用助成事業の手引きより)
名古屋市屋外分煙施設マップ(名古屋市屋外分煙施設設置費用助成事業の手引きより)

 また名古屋市では、令和8年9月19日から開催される「第20回アジア競技大会」を控えており、インバウンド対策にも力を入れている。

「外国人への喫煙対策としては、英語の路面表示、地区案内看板、デジタルサイネージに加え、案内チラシは英語、中国語、ハングルと、各国の旅行者へ向けて制作しています。案内チラシは、名古屋駅、栄オアシス、金山駅の観光案内所や路上禁煙地区周辺のホテル、セントレア空港到着ロビーに設置したチラシ配架コーナーにそれぞれ配架しています」(環境局事業部作業課)

受動喫煙に関する意識が高い名古屋市だけに、インバウンドを含めた愛煙家と、子どもやたばこを吸わない人が平和に共存する市を目指し、ぜひ屋外分煙施設の拡充にも力を入れてほしいものだ。