“障害は個性”と言わると違和感
知らないうちに、当事者に嫌な思いをさせることがある。
「外見に症状があることを『個性』と言われることに違和感があります。自分で変えられるもの、例えば、髪型とかファッションとか、自分で変化をつけられるものを個性と呼びたくて。病気によってできた症状を誰かに個性と言われると、自分が望んで表現したものではないですから」
ふたりともそう感じると話す。「障害は個性」と言われることに拒絶する人もいる。自分発信ならいいが、「それはあなたの個性だね」と他人が言うのは違うのかもしれない。
小林さんが今、口唇口蓋裂の当事者として発信を続けられるのは、子ども時代から寄り添ってくれた両親の存在が大きかったという。
「特に母は、『先のことを想像して不安になるのはやめなさい。そのときに起きたことを、そのとき考えればいい』と。『ケセラセラ、なるようになるさ』って(笑)。“親が明るく太陽のようにいれば、子どもも安心する”という母の姿勢に、今も私は支えられています」
疾患がわかった当初、小林さんの母は自責の念にかられた。『高齢出産だったから』『計画的でなかったから』と、自分を責め続けた時期もあった。しかし、保育器の中にいるえみかさんの姿を見て「この子はどれだけの坂を越えていくのだろう」と考えたとき、母としての覚悟が芽生えたという。
「両親はよく『不便ではあっても、不幸ではない』と言ってくれました。この言葉があったから、私は“病気がある自分”を責めることなく育つことができたと思います」
この言葉を当事者の子どもを育てている親御さんにも、ぜひ届けたいと話す。
「親が『この子はかわいそう』と思ってしまうと、それが子どもに伝わってしまう。でも、たとえ大変な状況でも“この子と一緒にいられて幸せ”と思えることが、子どもにとって一番の安心なんだと思います」