幼児と二人きりという専業主婦の大変さ
まず「専業主婦の大変さ」については、詩穂のパパ友・中谷(ディーン・フジオカ)の第2話の独白がわかりやすいだろう。中谷は厚生労働省のエリート官僚で、娘が生まれて2年間の育休を取得中。その分、妻の樹里(島袋寛子)が外資系でバリバリ働いている。
「すぐ泣く、すぐこぼす、日本語が通じない。幼児と二人きりの日々に精神が蝕まれていく。育休を取ってからの毎日は同じことの繰り返しで何一つ進んでいる感じがしない。永遠にタイムリープしているのではという気がしてくる」
確かにこれは、精神的にきつい。掃除、洗濯、料理などより数倍負担は大きいだろう。休みの日に夫がちょっとだけ子どもの相手をするのとはわけが違う。
でも、だからといって、中谷のセリフのように「働いてる方が楽だった」とまでは思わない。労働して対価を得るには、時には死ぬほど嫌な思いをしながら、理解のない相手と折り合わねばならないという、幼児相手とは別種の苦労が付きまとうからだ。
そして子どもは成長すればある程度楽になるのに対し、定年までは気が遠くなるほど長い。だから単純に「外で働くより専業主婦の方が大変」とは思わないけど、専業主婦の大変さのほんの一端は理解できた気はする。
専業主婦の必要性
「専業主婦の必要性」については、第3話で礼子の子どもが立て続けにおたふく風邪に罹った時に、詩穂が預かってあげたり、第7話で先輩主婦の坂上(田中美佐子)に認知症の疑いが出た時に、気にかけてあげるエピソードがあった。
専業主婦の必要性というのは、こうした「何か緊急事態が発生した時に対応できるよう、どんと構えていること」なのではないか。
そして詩穂は、普段は余力のある分、自家製プリンを作ったり、カレーの日は大人用と子供用の2種類を作ったりして家族を“応援”する。それくらいゆとりを持った存在の仕方も、素敵なことではないか。第5話で金魚鉢に反射した光が天井にゆらめくのを、苺と二人で寝転がって眺めるシーンも、ゆとりがあるからこそ経験できる大切な時間だと感じた。
子どもを預かってもらったお礼に、礼子は詩穂に8万円を渡そうとする。そこで筆者は「これから主婦の強みを生かした仕事が始まるんだ!」と想像して期待してしまった。この辺は、常にお金を稼ぐことを第一に生きてきた者ならではの発想だが、その感覚を裏切るように、詩穂はそのお金を断り、「子どもを預かるのを仕事にしたいとは思ってないんです」と言うのだ。