そんな背景食いの例として挙げてくれたのが、彼の出身地でもある山梨県の一地方に伝わるとされる家庭料理「マキタさん」。それは、ワンタンの皮でひき肉を包み揚げたものを生姜じょうゆで食べる、マキタ家の名もなき定番おやつだった。

ひとつの食べ物が生まれるルーツをつかんだ気がした

「まだ確固たる証拠をつかめていないのですが、ある日、僕が出演していたラジオに『マキタさんという料理をご存じですか?』という情報が届いたんです。なんでも、うちのおふくろからレシピを教えてもらった人が、自身の嫁ぎ先でそれを流行らせて以降、その地域では『マキタさん』と呼ばれ、食べられているらしいんです。

 育ち盛りの僕が『腹減った』と言えば、母が余り物で作ってくれたアレが、見知らぬ土地で根づいている。ひとつの食べ物が生まれるルーツをつかんだ気がして“ときめき”ました

 その後も追跡調査を試みたが、ラジオ局に保管されていた放送回のテープが上書きされてしまい、録音も残っていないという。

「『マキタさん』の新情報は、自分のラジオ番組でも毎回アナウンスしていますが、何も進展していません。でも、先日僕が出演している『ロビンソン酒場放浪記』(BS日テレ)という番組で訪れた鶴見(神奈川県横浜市)の居酒屋で、『マキタさん』に出合ったんですよ! 

 その店では“揚げワンタン”としてメニューに並んでいましたが、話を聞くと店主のお母さんがおやつで作ってくれた揚げワンタンがもとになったそう。出自まで『マキタさん』そのものだったので興奮しましたね

 現在も家庭料理『マキタさん』の調査は継続中とのこと。心当たりのある方は、ぜひ情報をお寄せいただきたい。

今僕は、東京と故郷である山梨との二拠点生活を送っていて、妻は小学生の息子たちと山梨で暮らしているので、娘たちと僕が暮らす東京の家の冷蔵庫の管理者は僕。なので『アレとアレを組み合わせよう』とか『古い卵を使い切らないと』とか、いつも頭の半分くらいは冷蔵庫の食材の使い道で占められているんです。

 そんなことをずっと考えている自分にもおかしみがあるし『マキタさん』をはじめとした、名もなき料理はこうして生まれるんだな、と知ることができました。休日にお父さんが『今日は頑張っちゃうぞ』なんつって新しい食材を買いそろえて手の込んだ料理を作るのとは、ワケが違うんですよ(笑)」

 マキタスポーツさんと同じように、冷蔵庫の食材の処理に悩む本誌読者のみなさんにおすすめなのが、同書の『納豆チャーハンの最適解』というコラム。

「昔、おふくろのひらめきで古くなったご飯と納豆を油で炒めたのが、僕と納豆チャーハンの戦いの始まりでした。それ自体はおいしくいただきましたが、もっとおいしくできるのではと自分の中でモヤモヤが残り、今も納豆チャーハンの正解を探求しているんです。

 本書には『最適解』のレシピも載せましたが、あくまで“現時点の最適解”に過ぎません。まだまだポテンシャルがある料理だと思うので、週女読者の方の納豆チャーハンも教えてほしいですね