食と向き合い、アレコレと思いを巡らせてきたマキタスポーツさん。年齢を重ねた今、不思議に思うことがあるという。

食べ物に対しては謙虚でいたい

「最近は『なぜ、同じものを食べ続けられないんだろう』と考えています。例えば、若いころは毎日焼き肉を食べたいし、仮に毎日焼き肉だったとしても食べられたと思うんです。でも、今は毎日焼き肉は厳しいし、スーパーでも野菜が目に入るようになりました。

 身体が野菜を欲しているんですよね。それだけでなく、温野菜など火が通った温かい野菜が食べたいと感じる。明らかに、食べたいものが変化してるんです。『健康のため』という理由で食材を選んだり、おいしくないものを無理に食べたりはしませんが、好みの変化は感じますね

 また、年齢とともにある野菜との関係にも変化が起きている、とマキタさん。

「お恥ずかしながら、子どものころからニンジンが苦手だったんですよ。でも、ニンジンが嫌いな後輩と話をしているとき、その後輩が『ニンジンって意味わかんないっすよね!』と言い放ったときに無性に腹が立って……。

 心の中で『俺やおまえよりもニンジンのほうが多くの人に愛されてるんだから、絶対にニンジンのほうが偉い。よし、俺はニンジンを食べるぞ!』と決心しまして。それから積極的に食べるようになったら、すごくおいしいんですよね。

 今では、一緒に『新婚さんいらっしゃい!』に出て人前でのろけたいくらいニンジンが好き(笑)。40歳を過ぎてやっとニンジンの偉大さに気づくくらいなので、自分はまだまだ青二才。これからも食べ物に対しては謙虚でいたいですね

 グルメ外道の求道の旅は続く─。

マキタスポーツ著『グルメ外道』(新潮新書・税込み1056円)比類なき言語化能力で「美味しい能書き」をたっぷり詰め込んだ、異能の人・マキタスポーツによる最初で最後のグルメ論。

取材・文/大貫未来(清談社) 撮影/矢島泰輔

1970年生まれ、山梨県出身。芸人、ミュージシャン、俳優、文筆家など、他に類例のないエンターテインメントを追求し、芸人の枠を超えた活動を行う。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』(扶桑社文庫)、『越境芸人 増補版』(東京ニュース通信社)など。近刊に自伝的小説『雌伏三十年』(文藝春秋)がある。