「性産業も普通の職業」

 映画の舞台はニューヨーク。若きストリップダンサーのアノーラが自らの力で幸せを勝ち取ろうと奮闘する姿を描いているが、折しも日本では、ソープランドで働く女性が主人公の邦画『うぉっしゅ』が公開され、高い評価を得ている。

『うぉっしゅ』の主人公は、“ソープ嬢”。主人公の加那はある日、母から電話で、一週間だけ祖母の介護を頼まれる。仕事のことを隠したまま、加那は祖母宅とソープ店を行き来して、二重生活を始める。認知症が進み、名前すら覚えていない祖母の介護に奮闘しながらも葛藤する加那。祖母と孫の結びつきをコミカルに描いた、ハートフルな人間ドラマだ。

ちりめんの紫帽子は歌舞伎の女形の象徴(画像は『べらぼう』公式インスタグラムより)
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 同時期に、性産業で働く女性が描かれたドラマや映画が脚光を浴びているのは偶然なのだろうか。ベテラン映画記者に聞いてみた。

「昔から、職業に貴賤はないといわれていたにもかかわらず、性産業に従事する女性たちは差別を受けていました。しかし、近年では、普段は“昼職”に励みながら性産業にも従事するごくごく普通の女性が増えました。その結果、性産業も普通の職業なんだ、フラットに見ましょうという考えを持つ人が増えたということです。それは海外だけでなく、日本でも。いわば、時代の流れです。昔も性産業に従事する女性を描いた映画はありましたが、やはり“キワモノ”扱いで、メインストリームに上がることはありませんでした。ただ、現在は彼女たちの生き方をちゃんと見てみようとする映画人が出てきて、そこに焦点を当てることに世の中が共感し、賛同する人が増えたということではないでしょうか」

 3作品が注目を集めているのは、決して偶然ではないと分析する。

 コロナ以降、サイドビジネスやダブルワークが許される企業も増えてはいるが、風俗などの性産業を選んだ女性が、会社にバレて懲戒解雇されたというニュースもたまに見かける。差別は完全になくなったわけではない。

 社会に暗い影を落としてきた“職業差別”問題。しかし、時代の流れを読んだドラマや映画の登場で、社会の意識変革は大きく進み始めたと言えるだろう。