現代人の風潮にマッチ

江戸時代の風刺画や黄表紙のようなものだといえます。『教育番組』の場合、『哲学的なタイトル × 超ショート』という形で構成され、人々がなんとなく問題と感じている事柄について、動画を見ることで『なるほど』や『確かに』などの気づきを与えてくれます。それが共感につながる。

 超ショートという構成も、タイパを重視する現代人の風潮にマッチしています」

 放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも登場する風刺画や黄表紙といえば、社会批判や皮肉などを盛り込んだ江戸庶民のための娯楽作品だ。また、人気となっているテーマ曲『きょういくばんぐみのテーマ』についても、

「江戸時代の農民や町民は厳しい身分制度の中で、盆踊りや阿波踊りなど、皆と同じ踊りをすることでつらい日常を忘れ、所属意識を高めました。

 視聴者にも、無意識で同じような心理が働き、上手に自らの心を支えているように思われます」(山下先生)

エッジのきいた歌詞が話題の『きょういくばんぐみのテーマ』(公式YouTubeより)
エッジのきいた歌詞が話題の『きょういくばんぐみのテーマ』(公式YouTubeより)
【写真】「なんにもできないゴミカスだ」衝撃的な歌詞の“テーマソング”

 なお、ももにくす氏は自身のX上で《『教育番組』は作者自身の経験を元に凝った自傷(自慰)行為として発信してたものが偶然沢山の人に共感されて大きなコンテンツになってしまっただけで、『世の中の辛い人達に寄り添ってあげよう』みたいな傲慢な意図はないとだけ言っておきたい それはそれとして皆には幸せになってほしい》とコメントしている。

 人間本来の心が求めていたコンテンツのようだ。

山下悠毅 精神科専門医、東京・池袋ライフサポートクリニック院長。近著に『依存症の人が「変わる」接し方』(主婦と生活社)がある