「子どもを虐待しているという告白ではありませんでした。しかし、育児のつらさやご自身の体調不良について話され、これは育児相談というより育児に不安があり、児相として介入すべき案件と判断しました。そもそも虐待通告だったならば、48時間以内に児童の安全確認をする『48時間ルール』があります。なるべく早く会ったほうがいいだろうと当日午後6時ごろ、母親に電話して“今日の夜にでも行きますけど”と、早期の家庭訪問を提案したのです」(同県・児童相談所改革室の担当者)
自宅前で容疑者の夫に声をかけると…
適切な育児が行われない「ネグレクト(育児放棄)」の可能性ありと判断したようだ。結局、母親の都合も踏まえて、翌日の午前10時に訪問する約束を取りつけたという。午前10時ということは犯行から10時間後。あと半日ほどで児相の担当者が訪問する予定だったのだ――。
現場近くに住む50代女性は、「母親としてやってはいけないことですが、育児の大変さはわかるので、そこまで追い詰められて、かわいそうだとも思います」と同情する。
別の女性は「ママ友らしき人が見当たらず、地域交流に消極的だったのかもしれません。相談相手が近くにいなかったのかな」。
40代女性は「周囲がもっとサポートしてあげられていたら」と悔やみ、70代女性は「人間関係が希薄な時代になった」と、やりきれない様子だった。
自宅前で未紗容疑者の夫に接触することができた。
取材したい旨を伝えると、夫は「すいません」と小声で答えるのが精いっぱい。事件にどのような形で気づいたのか尋ねても返事はなく、少し会釈して室内に消えた。
今年初め、暁人くんが無事に産声をあげた日は、一家にとって最も幸せな瞬間だったに違いない。4か月後の悲劇など想像しなかったはず。やりきれない思いが残る。