女性主人公の“変化”
ドラマに登場したあの“グッズ”、実は“死”や“突然死”を意識始めた人の中には、抱えている人が多い“不安”を象徴するものだ。人間誰しも……とまでは言わないが、知られたくない秘密、あるいは、「今、死んだらちょっとマズイ」と、わずかながらも危機感を抱いてしまう、誰にも知られたくない“モノ”を持っている人はいるだろう。
「元気なうちに、始末しておかないと」と考えてはいるのだが、機会を逃してしまい、そのうち忘れてしまい、どこかにしまいっぱなしに。しかし、予期せぬ“死”を迎えた後に、そんな“モノ”が発見されたら、生前に築き上げた人間像はあっさりと崩れ去り、死後の尊厳までもなくしてしまう可能性もある。このシーンを見て身につまされた視聴者は、きっと少なくないだろう。
ドラマウォッチャーでもあるベテラン映画記者は、こう語る。
「これもある種の“共感”ですね。これまで、ドラマの女性主人公の多くは、強く、たくましく描かれてきました。例えば、仕事の面でも男性に引けを取らないキャリアウーマンとか。しかし、時代とともに、価値観やライフスタイルは大きく変わっています。仕事より自分の生活を大切にしようと思う人も増えましたし、そんな“何気ない日常”を送っている普通の女性を主人公にしたドラマが、この頃は増えています。
TBS系の『対岸の家事』やNHKの『しあわせは食べて寝て待て』もそんな作品でした。多くの視聴者が共感できたから、ヒットしたんですね。『ひとりでしにたい』も同様ですが、それに加えて、今私たちが抱えている問題をどのように解決していけばいいのか、そのヒントを得ることができるドラマなのです」
“終活”と聞けば、辛気臭いと感じ、敬遠する人もいるだろうが、ギャグで味付けされたなら、距離感も近くなるだろう。
『べらぼう』は専門用語などを学んでいく自習型の“学習型ドラマ”だったが、『ひとりでしにたい』は共感型ドラマでもあり、“参考書型社会派コメディ”と言ってもいいのではないか。
話題作を連発するNHKの“攻勢”は、まだまだ続きそうだ――。