警察が有名人を逮捕しないでおく“理由”

 2015年、アメリカから国際宅配便で、「オキシコドン」と呼ばれる麻薬成分を含む錠剤を輸入した疑いで逮捕されたトヨタ自動車初の外国人女性役員、ジュリー・アン・ハンプ氏。都内のホテルで滞在中の同氏を逮捕したのが、小比類巻さんだった。

「この事件は、国際的な影響が大きく、上層部との軋轢がありました。指揮官と現場との間で板挟みの状況が起こるなどジレンマを体感した事件でもあった。芸能人の逮捕にもいえることですが、マスコミが大きく取り上げることで、世間の注目も集めます。慎重にならざるを得ない」

 その一方で、「警察の活動をアピールする“広報効果”もあるため、上層部はそうした案件を重視する傾向がある」と付言する。

「例えば、危険ドラッグ(RUSH)を所持していた大物歌手Bの事件にも私は関わっていました。容疑は固めていたものの逮捕許可が下りず、そのまま私は異動することに。しばらくしてBは逮捕されますが、タイミングに違和感を覚えたほどです。

 あくまで個人的な推測ですが、Bは警察にとって都合のいいタイミングで逮捕されたと感じています」

 たしかに、芸能人が薬物で逮捕されると、薬物使用に対して警鐘を鳴らすような宣伝効果があるだろう。そういう意味では、覚醒剤のみならず、危険ドラッグや大麻で捕まる芸能人やミュージシャンは、一種のスケープゴートといえるかもしれない。

「逮捕に至らないだけで、捜査線上に浮上してくる芸能人は少なくない。先ほど説明した“感を取る”に至らなかったケースもあれば、もっと大きな事件─国際的な麻薬組織を追っている場合などは、それどころではなくなる。運がよくて捕まっていない有名人もいるんです」