アイドルからアーティストへ

 33票で3位に入ったのは『スローモーション』。「デビューの初々しさ」(64歳・北海道・男性)、「最初に明菜を意識して聴き始めた曲」(64歳・北海道・男性)、「歌詞が切なくて、とても共感できるから」(57歳・宮城県・女性)。来生えつこ・たかお姉弟による作詞・作曲の、繊細な少女路線のバラード。「この曲を歌う明菜さんを見て将来この子は売れると思い、すぐにレコードを買った思い出があります」(67歳・兵庫県・男性)など、デビュー当初から存在感や歌唱力で日本中に衝撃を与えた。

1986年には女性初の“レコ大連続受賞”を果たした中森明菜
1986年には女性初の“レコ大連続受賞”を果たした中森明菜
【写真】「中森明菜の名曲」ザ・ベストテン!『DESIRE』『少女A』を抑えた1位は

 2位は14枚目のシングル『DESIRE―情熱―』。41票を獲得。「盛り上がる」(82歳・東京都・女性)、「元気が出る」(66歳・大阪府・男性)、「“ゲラッゲラッゲラバーニハー”というキメのフレーズがカッコよくてテンションが上がる」(46歳・神奈川県・男性)など、ノリのいい楽曲の良さを絶賛する声であふれた。サビの最後に“明菜ビブラート”と呼ばれるロングトーンを堪能できるのもこの曲の魅力のひとつ。本人がプロデュースしたという黒髪のぱっつんボブに、アレンジした着物を合わせた衣装も斬新で、「カッコいい」と大きな話題を呼んだ。

 1位は43票を集めた『飾りじゃないのよ涙は』。井上陽水が提供した楽曲で、10枚目のシングルとして発売。売り上げ枚数は『セカンド・ラブ』、『ミ・アモーレ』に次いで3位だが、「歌詞、リズム、テンポどれも好き」(73歳・静岡県・男性)、「ただ単にうまい歌ではなく、中森明菜を中心にそこに物語がある」(78歳・群馬県・男性)、「歌だけではなく衣装、ダンス、かけ声も記憶に残っている。出だしの低音が心地いい」(48歳・秋田県・女性)など、アツい支持を受けた。アイドルからアーティストへの、転機となったといわれる一曲。

 圧倒的な歌唱力と幅の広い表現力で、いま聴いても、まったく色あせることのない名曲ぞろいの明菜。活動を再開したばかりだが、この先も唯一無二の歌声で末永く歌い続けてほしい。


取材・文/天野 仲