合点がいかないシーンたち

 中だるみを感じさせないためには、主人公に何かと危機が訪れ、視聴者をハラハラさせることが必要になる。のぶと崇も一難去って、また一難が続いているのだが、“おやおや”となるシーンが多くなり、視聴者も気になり始めているようだ。

 例を挙げると、のぶはいきなり代議士秘書をクビになる。その理由が「“逆転しない正義”を探し求めているのぶは、代議士秘書に向かないから」らしいのだが、今一つ腑に落ちない。

 デパートでの仕事を辞め漫画家1本で行くと決めた崇だったが、実はそれほど仕事がなく、ビッシリと埋まっていた予定表は見栄を張っていたとのぶに告白するシーンでは、実はのぶも解雇されていたことを告白。崇は「お先真っ暗だね」と言うのだが、ちょっと待ってほしい。のぶは代議士の紹介で、どこかの企業の秘書が決まっているではないか。

NHK連続テレビ小説『あんぱん』ヒロインの今田美桜
NHK連続テレビ小説『あんぱん』ヒロインの今田美桜
【写真】どう見ても「ヴィトンに見える」今田美桜の着物

 そもそも崇がデパートを辞めたのは、漫画家の仕事の収入がデパートの給料を超えたからではなかったのか。在職中はサイドビジネスの収入とのぶの給料も併せて“トリプルインカム”だったわけだから貯えもあるだろうし、公設秘書だったのぶも、6年も勤めたなら多くはないだろうが退職金だってあるはずだ。

 漫画家でそれほど稼いでいたのに、デパートを辞めたら急に仕事がなくなるもの合点がいかない。

 また、いつの間にか、崇は『独創漫画派』という集団に属していたのだが、どうやって彼らと知り合ったのか、どんな集団なのか、メンバーはどういう漫画家たちなのか説明もない。崇が主人公ではないから、そこまで詳細に描かなくてもいいか……ということなのか。