一方で、ネット配信のドラマの制作現場は、コンプライアンスがとても厳しいという。
「撮影中に助監督がエキストラに対して、『おっさん、そこダメだよ』って注意したんです。その“おっさん”という言葉がNGだったらしく、翌日、助監督3人が全員に謝罪していました。現場にネット配信の会社の人が来ていて、厳しくチェックしているみたいです」
アカデミー賞監督はエキストラに深々と頭を下げる
ほかには、40代でエキストラ歴7年の女性Dさんのように、演劇の養成所に通い、女優になることをずっと夢見ながらエキストラに励んでいる人もいた。
「養成所から回される仕事なので、ギャラは発生しますし簡単なセリフもあったりします。でも、微々たるものですからほとんどが演技のレッスン代などに消えてしまうんですけどね」
現在50代で、エキストラ歴10年のEさん。彼女のエキストラ経験での一番の思い出を聞くと、特撮映画に参加したときだったという。
「撮影は900人以上のエキストラが参加して行われたんです。そのほとんどが特撮ファンでした。54日間にわたる私たちの撮影が終わった後、監督自らがエキストラ全員に『本日はどうもありがとうございました。必ずよい作品に仕上げます』と、深々と頭を下げてお礼を言ってくれたんです。
しかも、全員に限定のノベルティーも配ってくれました。その対応には本当に感動しました。アカデミー賞を取るほどの監督は違いますね」
そんなEさんは、通販番組にもエキストラとして参加しているという。
「通販番組でひな壇に座って隣の人と『欲しいー!』『安ーい!』と言っている人は、みんなエキストラ。ほとんどが通販番組慣れしている人なので、みんなリアクションがうまいんです。中には、10年以上そういった番組に出ているものだからSNSで通称“通販おばさん”といわれている人も。でもその人は実際に通販の商品が大好きで、出演した番組の商品を本当に買って帰っていくんですよね(笑)」
エキストラの世界にも、ドラマや映画のように物語があるようだ。
取材・文/樋口 淳