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 1月10日より公演中の舞台『DNA―SHARAKU』。出演者のミッツ・マングローブは、この作品で初めてミュージカル劇に挑戦している。

「どの仕事でも、なぜ自分が求められているのかを、いつも考えますね」

 本番約1か月前に仕上がり具合を聞くと、突然の告白。

「量は全然多くないけど、セリフが覚えられないんです。ちょっと記憶の回路がおかしくて。実は私、学習障害なの」

 学習障害とは、読む・書く・話す・計算などの特定分野で困難を伴うこと。ミッツの場合、暗記がそれにあたるという。

「暗記するときは“絵と音”で覚えるの。だいたい“絵”で頭に入るんですけど。教科書を覚えるときは、人物の顔に落書きをしたり、どこかに線を引っ張ったりして“自分用の景色”を作っていました。今も同じやり方で歌詞や台本を覚える。“自分用の絵”を頭の中に複写して、本番はそれを読んでいるんですよ」

 セリフを言うタイミングも“絵”で覚えている。

「共演者が“ココに立ったときにコレを言う”というように記憶しているんですよ。だから、少し立ち位置が変わったりすると、前後不覚になっちゃう。セリフ自体、なんて書いてあったかを頭の中で見て思い出すので、口に出すスピードが1~2秒くらい遅れてしまうんです。最終的には何もかもを犬のしつけみたいに繰り返すことで、クセをつけて身体に覚えこませるの」

 さらに、日ごろの歌手活動とはこんな違いが。

「マイクを持たないで歌うことが初めてなんです。マイクを握らないと声に力が入らないし、リズムや強弱もマイクでとるのに慣れているから、ワイヤレスマイクで歌うのが難しい。

 あと、基本的に、世の中の人はみんな声が大きいと思っていて。声が張れるし、通るじゃない。私の声は低くて小さいし、ちょっと頑張るだけで、のどが痛くなるから、舞台用の声の出し方ができないんですよ。だから、わりといっぱいいっぱいですよ」

 共演者には歌手のナオト・インティライミをはじめ、若手イケメン俳優の小関裕太、ベテラン俳優のイッセー尾形など幅広い面々がそろっている。彼らの歌声の印象は?

「どう歌えば正解なのかはわからないですけど、みなさん、とても上手ですよ。それにミュージカルだと、いわゆる“ミュージカル調”に矯正されるとよく聞くんですけど、のびのびと自分なりの歌声でやっていると思いますね。私も今のところ、野放しでやらせてもらっています」

舞台『DNA-SHARAKU』

 人工知能が支配する未来のTOKYO。政府から謎の絵師・東洲斎写楽を抹消するために江戸時代に送り込まれた2人の青年(ナオト・インティライミ/小関裕太)が“創造する心”の大切さに気づき……。1月24日まで東京・新国立劇場で公演。1月28日~31日は大阪のシアターBRAVA!。2月6日と7日は福岡のキャナルシティ劇場で。

撮影/引地信彦