同じ役をやっても印象に残る田中みな実

 以後、『Destiny』の情緒不安定で、亀梨和也に執着して事故死してしまうような役がはまり役である一方、『愛の、がっこう。』で木村文乃を守ろうとする姐御肌な役もよく似合う。『最愛』の悪を追及するノンフィクションライター役も危うい感じが良くて、真実に迫った直後に死んでしまう哀しい最期も印象に残った。『あなたがしてくれなくても』の離婚した夫や不倫相手を叱り飛ばしつつも許す役は、同性からも「カッコイイ」との声が集まった。
 
 同じ役をやっても、印象に残る俳優と残らない俳優がいる。田中は前者で、たぶん自分がその作品でどういう役割を求められているかを的確につかんで、見せ方も知っているから、どんな役でも対応できて、視聴者にも印象を残せるのだろう。

 それが作り手にはわかるから、年に2~3本のペースで連ドラに声がかかり続けるのであって、2023年にはNHKBSの『悪女について』で主演も果たしている。

 視聴者が『フェイクマミー』6話のラストを見て「いよいよ本領発揮か?」と期待するのも同じことで、「田中みな実なら、ただで終わらず何かやってくれるだろう」と期待させるのも俳優の実力といえよう。

 6話ラストでは、学校に「1年1組に偽りの母親がいる」という怪文書が届いていた。これの送り主はさゆりなのか? そして今後、薫の嘘を暴いていく側に回るのか?

 あっさり7話で薫との仲が修復してしまったらちょっとがっかりだが、そうすんなりとはいかない気配がある。

 そもそも、さゆりの夫・慎吾が茉海恵の元恋人で、薫の元上司というのは、あまりに世間が狭いと若干ツッコみを入れたくもなるが、その慎吾が息子のことを「俺と似てない」と発言していたのも気にかかる。もしや、さゆりも大きな秘密を抱えているのか。

 本作の俳優の番手では、薫の母親役のベテラン・筒井真理子でなく、田中がトリに配置されていることにも注目したい。そのことからも、物語後半のキーパーソンになりそうなことが伝わってきて、田中の演技に期待がかかるのだ。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。『3年B組金八先生卒業アルバム』『オフィシャルガイドブック相棒』『ヤンキー母校に帰るノベライズ』『IQサプリシリーズ』など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に『風景印ミュージアム』など。歴史散歩の会も主宰している。