視聴者からのもっともな感想

 だがネット上の反響を見ると、竹内や北村のような男性なら、「もっと早くから女性側の希望を口にしていれば修繕できたのでは?」という声も多い。竹内と夏帆は大学時代からのカップルだから10年以上の付き合いだし、仲間は19年前に育児ノイローゼになってからずっと我慢してきたというのだから、視聴者の感想ももっともだ。

 仲間や夏帆の不満は、夫や恋人個人に対してというよりも、長く続いてきた男性優位社会への不満が、代表して夫や恋人へ向けられた気もするのだ。

 男性である筆者からすると、本当にそんなに、男ばかりがのんきに得をしてきたのか疑問もあるが、私の周囲も含めて世の中の女性全体が、鈍感で苦労知らずの男たちに傷つけられてきたというムードがあって、その根深さに暗澹たる気持ちにもなるのだ。

 ただ物語も中盤を過ぎて、夏帆や仲間も相手の良さに気づき始めている。結局、問題の解決には男女が互いに分かり合おうとすることが大事だという、極めて当たり前だけど、そのことが難しいというところにたどり着くのかもしれない。

 ふた組が元鞘に戻るのかは終盤の最大の見どころになるが、このコラムを書いていて筆者自身、気づいたことがある。それは、答えの出ない男女の問題を「あーだ、こーだ」と考えるのは、けっこう楽しいということだ。世の多くの男女がそうして、離婚や破局にまでは至らずに過ごしているのではないだろうか。今年前半にヒットした『続・続・最後から二番目の恋』や『対岸の家事』にもそういった要素があった。

 近年は刑事ドラマや法廷ドラマ、医療ドラマなど、日常から離れた大事件が起こるドラマが大勢を占めていた。

 対して男女の問題はささいな事柄だけど、誰にとっても身近で、永遠に解決することがない問題だ。

 それを「あーでもない、こーでもない」と考えたり、誰かと言い合ったりできることが、ドラマの新しい鉱脈になっているのかもしれない。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。『3年B組金八先生卒業アルバム』『オフィシャルガイドブック相棒』『ヤンキー母校に帰るノベライズ』『IQサプリシリーズ』など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に『風景印ミュージアム』など。歴史散歩の会も主宰している。