目次
Page 1
ー スタバらしい接客がもっとも大事

 

 日本国内のカフェチェーンの店舗数で、王者に君臨するスターバックス(以下、スタバ)。店舗数2位のドトールのほぼ倍の2000店舗を超え、圧倒的な首位をキープしている。しかし、そんなスタバが本場アメリカでは、2025年7〜9月期決算で、純利益が前年同期比85%減と苦戦中。北米エリアだけで100店舗以上の閉店、900人の従業員削減を発表するなど財務状況が悪化しているようだ。その要因について、

「アメリカのスタバの店舗数は約1万7000で、人口に対して日本の3倍以上、店舗が飽和状態になっています。これは、対前年比で売り上げを増やさなければいけないという株主からのプレッシャーで店舗数を増やしすぎたことが要因です

 と分析するのは、スターバックスコーヒージャパン元CEOの岩田松雄さん。岩田さんによれば、接客にも問題があるという。

スタバらしい接客がもっとも大事

アメリカのスタバは接客の質があまりよくなく、ブランド価値が落ちてきています。その原因は半分近くがフランチャイズであること。フランチャイズは本部の教育が行き届きにくく、ブランドイメージをコントロールしにくくするんです」(岩田さん、以下同)

 日本だとスタバに行く=カッコいい、イケてるといったイメージがあるが、アメリカでは?

「アメリカではそういったイメージはまったくないですね。接客がよくない店舗も多いですから、ひとつのコーヒーチェーンという立ち位置にすぎません」

 一方、日本ではスタバの2024年の国内店舗数は前年比で105・4%、売上高は111・1%と成長し続けている。

日本は90%以上が直営店で、本部の教育が届いている点がアメリカとは違います。セブン―イレブンで130円からおいしいコーヒーが買える世の中で、パートナー(スタバの従業員)によるスタバらしい接客がもっとも大事で、差別化になるポイントだと思います

 しかし、そのスタバの接客に岩田さんは警鐘を鳴らす。

「私が社長だった10数年前は、アルバイトの採用倍率が30倍のこともありました。しかし、今の1年で100店舗ほどの出店スピードの速さでは、昔に比べると優秀な人は採用できないと思います。

 店舗数は10数年前の倍になりました。出店が多くなれば場所も悪くなり、この出店スピードでは人の教育が間に合わないと思います。

 中国も2024年に1年で800店舗ほど出店し、ダメになって結局、中国事業は売却されました」

 日本のスタバもアメリカのように人気に陰りが見える可能性も……。

「十分にあると思います。私が社長のときも、1年で100店舗、200店舗新規の出店をするようアメリカから言われていましたが、そのプレッシャーに今の社長がどこまで耐えられるか

 店舗数を増やしすぎるとアメリカや中国の二の舞いになる可能性が高いです。目先の売り上げや利益よりも日本のスタバらしさを大切にしてほしいなと思います」

 日常のちょっとしたご褒美感のある日本のスタバブランドを、経営陣は守り切れるだろうか。