稽古をする時間もないくらい多忙だった
「てんぷくトリオ」を結成すると、伊東さんは茶の間の人気者になった。来る仕事は拒まず、流れに身を任すことを信条にしてきたと話す。「誠心誠意、全力でやる」が、その一方で、頑張りすぎないようにしていたとも明かす。
「頑張りすぎている舞台は見ても疲れます。お客さんにはリラックスして、笑ってほしい。肩をこらせるようなことをしたら失礼ですよ」
伊東さんは、過去のインタビューで、「お客さんが駅に着く前に忘れちゃうような、ただただ乾いてる喜劇をやりたいんです」と語っている。
「覚えられているっていうのもプレッシャーなんです。劇場を出ていくときに、『面白かったな』でいい。それ以上でも以下もなく、その言葉にすべて詰まっていますから。家に戻っても、まだ覚えられているなんて望みません(笑)」
そうは言うが、この世には忘れたくても忘れられない─脳裏に焼きつくものがある。例えば、伊東さんが演じた“ベンジャミン伊東”。1976年に放送を開始した『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』(現・テレビ朝日系)から生まれたキャラクター“ベンジャミン伊東”は、電線軍団を率いてこたつに上り、『電線音頭』を歌い踊る。
同番組は当時、人気絶頂だった国民的アイドルグループ・キャンディーズと、伊東四朗、小松政夫さんという異色の組み合わせが話題に。瞬く間に大ブームとなった、歌とコントを巧みに融合させた番組だった。
「よくやっていたなと思います。稽古をする時間なんてないですから、小松っちゃんもキャンディーズも即興でやっていた。“ベンジャミン伊東”も、制作スタッフから『今度、電線軍団っていうものをつくる。キャンディーズと小松政夫を入れるから、伊東さんはこたつの上で踊ってくれ』って丸投げされて誕生したくらい。自分でも、あれがいちばんバカだったと思います(笑)」











