イタリアで開催されているミラノ・コルティナ五輪は大会中盤を迎えて熱戦が繰り広げられているが、そんななか、2月11日に行われたスピードスケート男子1000メートルが波紋を広げている。
スピードスケートには“優先権”がある
問題となったのは、オランダのユップ・ベンネマルスと、中国の廉子文のレースだ。ベンネマルスは2025年の世界選手権を制した現役王者であり、今大会でも金メダルの最有力候補。“事件”は、2人のラスト1周のバックストレートで起きた。
スピードスケートでは1周ごとにインコースとアウトコースの選手が入れ替わる“交差エリア”があるが、ここでは外側から内側へ入る選手に優先権がある。
「このとき優先権を持つのはアウトからインに入るベンネマルス選手でした。しかし、イン側から出る廉選手が早すぎるタイミングでレーンを変更。ベンネマルス選手は廉選手の左足と接触し、大きくバランスを崩して失速してしまったのです」(スポーツ紙記者、以下同)
五輪記録を上回るペースで滑っていたベンネマルスは、ゴール直後に怒りを爆発。廉に対して「なぜだ!」とばかりに激しいジェスチャーで詰め寄り、背中を叩いて抗議し、会場を埋め尽くしたオランダのファンからも凄まじいブーイングが飛び交った。
審判団は即座に廉を「妨害による失格」と判定。被害を受けたベンネマルスには単独での再レースが認められた。しかし、一度全力で滑りきった直後だったこともありタイムは伸びず。結局、接触した最初のレースのタイムが採用され、順位は5位に終わった。
「接触がなければメダルは確実、五輪レコード更新の可能性すらありました。わずか0秒24差で別の中国選手が銅メダルを獲得したことも、オランダ側の憤りに拍車をかけています」
そんななか、失格となった廉はSNSを更新し、自身の見解を表明した。
《相手選手との接触は予想外のものだった》《私は何も規則違反の動作はしていないし、そうする意図もなかった》《レースの過程には予想外の出来事やトラブルはつきもので、それが競技スポーツだと思う》
この「故意ではない」という釈明に対し、ネット上では《優先権のルールを知らないなら競技をやめろ》《被害者にメダルを返せ》と批判が殺到。一方で、《中国選手が失速させてオランダ選手の後ろに着くのは難しいタイミングかなとも思ったけど》といった擁護の意見も上がっている。
この一件は、海外メディアでもスキャンダルとして大きく報じられ、英スポーツメディアは「今大会で最も物議を醸した出来事のひとつとして記憶されることになるだろう」、世界王者の夢が無残に散った夜を「きわめて悔しい夜」と表現。盛り上がる五輪の祭典に、後味の悪さを残す形となってしまった。






















