大阪市は万博開催、路上喫煙禁止を施行する前年の令和6年度予算で約11億円の喫煙所整備事業関連予算を確保していた。大阪市が投じた多額の予算と労力に比べれば「少ない」と言わざるをえず、本気で市内の分煙環境を整えようという気概は残念ながら感じられない。
疑問点は他にもある。
「市内全域」に規制範囲を広げるとなれば、当然、違反者を巡回して注意・指導する人員も大幅に増やす必要があるはずだ。しかし、「現在稼働している『喫煙禁止地区等指導員』の拡充は検討しているか」という質問に対し、市はこう回答した。
《令和8年度については、拡充の予定はありません》
規制エリアを劇的に拡大する反面、巡回・指導体制の拡充予定がない。これでは、「ルールだけ作って、あとは放置」と言っているのも同然である。指導の目が届きにくい場所で喫煙が起きる可能性もあるだろう。
さらに、花博を見据えているというのであれば、急増する外国人観光客への対応も必須となる。日本の複雑な喫煙ルールを知らないインバウンド客に対する周知方法について問うと、次のような回答が返ってきた。
《喫煙禁止地区内には禁止地区をご案内する看板を設置していますが、多言語表記としています。このほか、GREEN×EXPO2027開催を見据え、外国人が良く閲覧する観光情報サイトや観光情報誌等への案内掲載を検討しています》
「サイトや情報誌への掲載を検討」というが、現地で初めて知る来訪者も想定されるため、現場掲示や多言語案内の厚みが重要になる。結果的に、事情を知らない外国人観光客が路上でたばこを吸い、トラブルになる光景が目に浮かぶようだ。
市民生活のルールを大きく変える以上は
喫煙の規制というものは、「ただ禁止すれば街が綺麗になる」という単純なものではない。喫煙者の行動心理を読み解き、適切な場所に、適切な規模の喫煙所を配置するという緻密な計画が必要不可欠だ。そう考えると、今回の横浜市の準備状況には甚だ疑問に感じざるを得ない。
行政がやるべきは、吸う人も吸わない人も互いに快適に過ごせるよう、公費を投じてしっかりとした「分煙環境」を整備することである。
花博は“きっかけ”に過ぎない。市民生活のルールを大きく変える以上、必要なのはスローガンではなく、実行計画と検証の仕組みだ。万博前に路上喫煙を禁止したことが大阪市の「万博の負のレガシー(遺産)」になりつつある今、横浜市が問われているのは、行政の準備の質そのものである。











