自民党の中曽根弘文氏による「愛子さまと結婚する人はいない」という不適切発言が波紋を広げる中、政府は6月30日、皇族数確保に向けた皇室典範改正案を閣議決定した。改正案には「女性皇族が婚姻後も皇籍に残る案」と「旧宮家の男系男子の養子縁組案」の2案に加え、養子の子が男性の場合に継承権を与える内容が盛り込まれた。
この進め方に、立憲民主党の水岡俊一氏が「議論なきだまし討ちだ」と猛反発するなど野党から批判が相次いでいる。天皇陛下が「国民の理解が得られるものに」と望まれる中、過去の議論を覆す政府の強硬姿勢には疑問の声も大きい。
一方、宮内庁の黒田武一郎長官は、閣議決定は「非常に重い」と判断を国会に委ねた。強行突破のようにも見えるプロセスで進む今回の改正だが、法案が抱える問題点について識者らはどう見ているのだろうか。駒澤大学法学部教授でヨーロッパのの王室に詳しい君塚直隆先生に話を伺ったーー。
天皇陛下ご自身にもお気持ちを発信していただきたい
今回の皇室典範改正案は、到底「改正」と呼べる代物でなく「改悪」と言うほかありません。
女性皇族が婚姻後も皇室に残るとしても、一時的な減少を防ぐだけで、配偶者や子どもを皇族としない限り、根本的な維持・増加にはつながりません。旧皇族の子孫を養子に迎える案にしても、全員拒否される可能性すらあります。そして、皇室典範第一条の“男系男子による継承"が存続する限り、「男子を産まなければいけない」というプレッシャーが残り続けます。そのような環境で、一体誰が皇室に嫁ぎたいと思うのでしょうか。
そもそも、皇室の根幹に関わる問題を、一部の国会議員だけで決めるべきではありません。当事者である天皇や皇族のご意思、そして国民の声に真摯に耳を傾けるべきです。世論に対しては、国民投票などを通じ、女系、 女性天皇への賛否や絶対的長子相続性の採用について直接問う機会を設けるべきではないでしょうか。宮内庁はもちろん、天皇陛下ご自身にもお気持ちを発信していただきたいところです。
一方で、今回、「改正されようとしている」というパンドラの箱が開いた点は、一歩前進とポジティブに捉えられます。昭和22年の改正はほぼ変更がなかったため、明治22年の制定以降、実に137年ぶりの歴史的な転換点となります。本来、皇室典範も法律である以上、時代に合わせて改正を重ねるべきものです。
先般、天皇、皇后両陛下が訪問されたオランダ・ベルギーは絶対的長子相続性を採用しており、両国とも次期国王は愛子さまと同年代の女性です。日本との姿勢の違いは明白です。男女同権の観点からも当然のことであり、彼女たちは厳しい軍事訓練をこなし、国軍の最高司令官になるという覚悟を持たれています。
また、幼いころからの国際的な交流こそが皇室外交の最大の強みです。愛子さまも幼少期に天皇、皇后両陛下とオランダを訪ねられましたが、こうした経験の積み重ねが皇室外交の要であり、急に迎えられた養子の方々には一朝一夕で担えません。
現在も海外訪問を積極的にこなされている高円宮久子さまをはじめとする女性皇族方を、男性皇族と異なる身分と待遇にするのは本末転倒です。海外では「プリンセス」の国際的な称号とその格付けが重要視されます。政府と宮内庁は、皇室の真の存続と、皇室外交が持つ本来の意義を今一度直視すべきです。
君塚直隆 駒澤大学法学部教授。イギリス政治外交史などを専門とし、著書は『エリザベス女王 増補版 史上最長・最強のイギリス君主』ほか多数























