術後の地獄の苦しみ

 手術を受けたのが7月22日。舌の3分の1から首の右側のリンパ周辺までを取り除き、同時に舌を再建するという大手術で、手術時間は15時間にも及んだ。

「歯科口腔外科や形成外科の先生など、すごい人数の方が手術室の中にいたのは覚えています。術後、目が覚めてまず感じたのは、息苦しさとのどの乾燥。それが本当に地獄の苦しみで……。舌は太ももの肉を移植して再建したのですが、術後すぐはむくんですごく大きくなっていて、口の中に収まりきらないんです。

 常に口を開けた状態になってしまうから口の中とのどが乾燥し、舌が気道をふさいでしまうから呼吸がスムーズにできない。細いストローでそーっと息をするような、集中しないと呼吸が止まってしまいそうな恐怖を感じました。術後1週間は本当に地獄の苦しみで『治ったら絶対にコーラを一気飲みしてやる!』と毎日思っていました(笑)」

のど元には、手術時の痕がまだ残る。「痛みはまったくありません。今後5年間は、転移や再発がないかを注意深く見ていくことになりそうです」(撮影/齋藤周造)
のど元には、手術時の痕がまだ残る。「痛みはまったくありません。今後5年間は、転移や再発がないかを注意深く見ていくことになりそうです」(撮影/齋藤周造)
【写真】「目覚めたら息苦しくて地獄だった」舌がん手術時の痕が首に…

 手術から2週間弱、呼吸も安定してきてなんとか声も出せるようになったノグチさんは「話せることの喜び」をひしひしと感じた。

「まだ舌が大きいせいで滑舌はかなり悪いのですが、声が出ないなんて初めての経験だったので、嬉しかったです。病室で『がん手術を乗り越えた』という動画を撮影してYouTubeで配信したところ、私のチャンネルではいまだかつてないほどの再生回数に。

 たくさんの人が自分を応援し、注目してくれていることが大きな支えになりました。配信をやっていてよかったと思うのはこういうときで、コメントでたくさん励ましをいただいたり、舌がんや治療に関するさまざまな知識を得られて、ありがたかったですね」

 ちょうど1か月の入院期間を終えて8月下旬に退院。現在は今後の治療法を検討している最中だという。

「おそらく抗がん剤治療と放射線治療を1年かけてやることになりますが、詳細は未定です。抗がん剤で髪の毛が抜けると聞いたので、今後に備えて髪を短くカットしました」

 医師から舌は時間の経過に伴って小さくなり、今後は正常なサイズに戻ると言われた。

「この状態なら、もっと滑らかに話したり、以前のように歌えるのではと期待しています。そして食事をもっと楽しみたい。今は舌をうまく使えないので食事がしにくく、食べられるものが限られているんですよ。

 メスを入れた首は右肩が少し上がった状態になっているので、回したり動かしたりしにくい。ダンサーに復帰するため、どこまで身体を戻せるかが今後の課題です」