野菜も家具も洋服も!手作りで節約&心豊かに

余った野菜はみじん切りにして自家製の「スープの素」にし、和洋中あらゆる汁物に活用。栄養豊富で時短&ムダなし!
余った野菜はみじん切りにして自家製の「スープの素」にし、和洋中あらゆる汁物に活用。栄養豊富で時短&ムダなし!
【写真】余った野菜を活用!栄養豊富&時短の「スープの素」

 覚悟と責任感から始まった家仕事も、今では自分の好きな世界を表現する最高の時間になっているという。物価高が続く今、多良さんの暮らしで大きな助けになっているのが、家庭菜園と3食の自炊だ。

「一番お金がかかるのが食費ですが、出来合いのお惣菜や外食は高いですよね。元気なうちは自分の手足を動かして料理をするのが一番経済的です。庭の小さな畑で、夏はキュウリやピーマンなど16種類の野菜を無農薬で育てています。ニンニクも1年分を自家栽培。買うと結構お高いですが、簡単にできて貯蔵もきくので本当に助かっています」

 毎日の食事は、料理研究家の土井善晴さんが提案する「一汁一菜」スタイル。

「おみそ汁やスープメーカーで作る具だくさんスープに、肉や魚などのタンパク質の主菜がメイン。それに生野菜や野菜の煮物、手作り保存食などの副菜を添えることも。15分ほどでサッと作れます。

 栄養は1日の中でバランスが取れればOKという大雑把さで、楽しむのが長続きのコツです。夫が食器洗い担当なので、品数が少ないと後片づけが楽だと喜んでくれます」

 基本的には、夫の年金内で毎月のごく質素でシンプルな生活をやりくりしているという。しかし、ただ切り詰めるだけの節約ではない。

「毎年年末になると、翌年のテーマを『旅行の年』とか『リフォームの年』と決め、年間予算を立てます。

 普段は畑仕事や織物など、お金のかからない楽しみで質素に過ごし、大きなリフォームや家族のイベントのときには、貯めておいた私の年金をパーッと使って思い切り楽しむ。使うときと抑えるときのメリハリをつけることが、心豊かに暮らす秘訣です」

 特別なジムや習い事には通わず、日々の家仕事がそのまま体力づくりにもなっていると話す。

「一番鍛えられるのは畑仕事や庭の草むしりです。立ったりかがんだりを繰り返し、力も使うのでいい運動になります。家の中でも、高い所のものを手を伸ばして取ったり、下の引き出しを開け閉めしたりして、全身をくまなく使うようにしています」

 今年8月、車を自宅前の家の塀にぶつける事故を起こし、肋骨を骨折してしまった多良さん。しかし、医師も驚くほどのスピードで回復したという。

「昨年、股関節の手術をしたときもそうだったのですが、日頃から家仕事で身体を動かしているおかげか回復がとても早いんです。事故を機に車を処分して免許も返納。今はお年寄り向けのお得なバスやタクシーを使って、買い出しを楽しんでいます」

 また、50代から習った織物でタペストリーを織ったり、好きな藍染めの古布で小物を制作したりと、手仕事の趣味も豊富。最近ではネット通販で黒い鉄製の脚を取り寄せ、YouTubeを参考にしながら庭用のウッドテーブルをDIYで作り上げたというから驚く。

「人生は楽しくなくちゃダメ。苦しい時期もありますが、永遠には続きません。過去の失敗や、つらかったことは全部捨てて、後ろを振り返らないこと。『明日はどんな楽しいことをしようかな』と小さな楽しみを思い浮かべながら、毎日を笑顔で過ごしたいですね」

取材・文/荒木睦美 写真/林ひろし(『83歳の私を支える家仕事』すばる舎より)

多良久美子さん
結婚後、4歳で麻疹により最重度知的障がいとなった息子を育てる。社会福祉協議会の仕事などに携わり、80歳手前で引退。現在は「障がい児・者の親の会」の相談役を務める。著書に『83歳の私を支える家仕事』(すばる舎)など。