今だから思う「もっと弱音を吐き合えばよかった」
奈緒さんを失って11年の歳月が経過した。今改めて振り返り、当時こうしておけばよかったということは何か尋ねた。
「妻が自身の悩みや苦しみを、素直に言えるようにしてあげればよかった。妻はがんが転移してつらい状況なのに、僕の前では弱音や涙を見せることはありませんでした。自分が泣いたりしんどい顔をすれば心配をかけると思い、無理して強くいてくれたんです。そうさせたのは僕。
僕も妻の前では弱音や涙を見せられず、それが結果的に負担をかけることになってしまった。妻は本当は怖かったし、不安な気持ちでいっぱいだったはずです。互いに『しんどいね』『不安だね』と正直な気持ちを言い合えればよかったんだと思います。そうした環境をつくれなかったことが、悔しいです」
冒頭の言葉にあるように、奈緒さんに会いたい思いは年々募るばかり。でも、その願いは叶わない。
「家に帰り、『今日は疲れたなあ』って口にしますよね。また、仕事で嫌なことがあったとき、愚痴を言ったりしますよね。その言葉を聞いてくれる相手がいるというのはすごく幸せなこと。妻がいなくなってから、そう強く感じます。
結婚生活が長くなると夫婦の会話は減るようですが、返答がなかったとしても、うなずいてくれる相手がいるというのはめちゃくちゃ幸せなこと。僕自身もですけど、パートナーがいるときはそのありがたみに気づかないんですよね」
シングルで子育てしながら、2025年からラジオ番組のパーソナリティーを担当。言葉を伝えるメディアの現場に復帰し、リスナーに価値がある情報を届けている。そんな清水さんから最後にエール。
「僕は『無理せず、がむしゃらに』というのをモットーにしています。むちゃくちゃ矛盾していますよね。でも、両方重要なこと。無理しちゃいけないときがあって、そこでは立ち止まったり休んだりすればいい。一方でがむしゃらに頑張らないといけないときもある。生きたくても生きられない人がいる中、今があることに感謝してやり抜く。だから僕はいつも『一緒に頑張りましょう』と皆さんに声をかけています」
元読売テレビアナウンサー。夕方の報道番組のメインキャスターを務め、現在はフリーアナウンサーとして幅広い分野で活動。著書に『112日間のママ』、『笑顔のママと僕と息子の973日間』(共に小学館)がある。
取材・文/百瀬康司


















