大黒柱を亡くし、抜け殻のようになってしまった彼女を支えたものは何だったのか。
「彼からは、結婚指輪を含めてプレゼントをもらったことはないですね。でも、私はそれでいいんです。“大きな愛”と“大切な人脈”を残してくれましたから」
吹っ切れたように笑顔でそう語るのは、昨年2月に亡くなった山本文郎アナの妻・由美子さん。現在はタレントやイベントプロデューサーとして活動している。
「彼の死後、人前では“大丈夫?”と言われたくなくて明るく振る舞っていたんですが、家に帰ってくるとひとりじゃないですか。もう涙、涙で。数か月間は、水分が涙で全部出ちゃったんじゃないかと思うくらいの毎日でした」
立ち直るきっかけとなったのは、50日がたったときに行った納骨式だったという。
「うちは神道なので仏教とはちょっと違って“50日祭”という言い方をするんですが、彼はすごい寂しがり屋だったし、すごい“やきもち焼き”だった。だから、ひとりでお墓に置いていくことに不安を感じていたんです。でも、お墓を開けたときに、山本の前の奥さまがそこに骨壺でいらっしゃってね。“あぁ、これで寂しくないな。大丈夫だな”と思えたら“じゃあね”ってお別れができました」
文さんの叔母がかけてくれたエールも、彼女にとっては大きかった。
「実の娘のように私をかわいがってくれた叔母が“ユミちゃん、いつまで文郎ちゃんのことでビービー泣いているの。いい加減忘れるくらいになりなさい! 残された人間がいつまでも泣いていたら、天国に行った人間も喜ばないのよ”とガツンと言われまして。初めは“そんなこと言われても……”と思っていたんですが、日がたつにつれて徐々にではありますが、忘れることができるようになりましたね」
文さんと由美子さんは’08 年の7月に入籍。ふたりの年の差が31歳あったことから、メディアでも話題になった。
「“お金のためなの?”という質問もよくされましたが、お金のためにこれからまだまだ楽しめる人生を捧げられますか? 介護漬けになるリスクだってあるんですよ。何でもやってあげたいと思える人だったから結婚したんです。自分が40代で、明日から介護になるかもしれない人と結婚するのは、やはり愛していないと無理ですよ」
確かに、31歳差というのは親子ほど年齢が離れていることに。当然、夫のほうが自分よりも先に逝ってしまうリスクも大きくなる。結婚することに恐怖はなかったのか。
「もちろんそれはありました。普通なら20~30代で結婚してそこから子どもをつくって、旦那さんは昇進して、という人生ですよね。でも私たちは、いかに楽しく人生を終えられるか、というところだった。だから、彼に対して私は何をしてあげられるだろうと真っ先に考えましたね。最期によかったと思えることをしてあげなきゃと思っていました」