'15─'16シーズンの開幕戦『オータム・クラシック』で、シニア参戦後の初戦最高得点184・05をマークし、「収穫も課題も見つかった」と笑顔を振りまいた羽生結弦。いよいよ、10月30日のGPシリーズ「カナダ大会」から本格的な戦いが始まる。

「初戦の『オータム―』は、プロ野球でいえばオープン戦のようなもの。4回転トゥーループ失敗も悲観することはなく、感触をつかむ大会でした。今季の最終目標は、あくまでもアメリカで開かれる世界選手権('16年3月28日)で、世界王者に返り咲くことです」(スポーツ紙記者)

 そんな羽生が今季、”SEIMEI”と名付けたフリー演技では、'10年公開の映画『陰陽師』の劇中歌を使っている。このプログラムで世界王者に返り咲こうとする彼の”決断”を後押ししていた人物の存在が。

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常に羽生のそばにいる菊池氏とそれを笑顔で見守る羽生ママ

「ゆづクンが5歳のときから親交があり、ソチ五輪でも、昨年のGP『中国杯』の事故のときにも、そばに付き添っていた、整体師の菊地晃さんですよ。“チャクラの仙人”なんて呼ばれたこともありました」(フィギュア関係者)

 羽生の故郷、仙台市内で整骨院を営む菊地氏。ソチ五輪では日本選手団のトレーナーとして参加し、昨シーズンの中国杯ではパーソナルトレーナーとして現地入りしている。

「ゆづクンは夢枕獏氏の『陰陽師』シリーズが愛読書のひとつで、中国をルーツにした陰陽道や菊地さんが専門とする気功術などに興味を持っており、彼の治療やメンタル面の指導に信頼を寄せてます」(スポーツライター)

 昨年の中国杯の事故のときも、羽生は菊地氏の肩を借りてリンクを後にしていた。ソチ五輪でも、選手団に帯同しながら、ほかのスポーツ選手団のトレーナーとは一線を画していたという。

「菊地さんは柔道整復師やタイ古式マッサージ師、スパイラルテーピング協会会員という肩書は持っているものの、各連盟や協会の定める講習会を受けてませんでしたね。試合会場でも、選手控室でマッサージする姿よりも、リンクの脇で祈っているような姿が印象的でした。

 それも羽生くんが登場する前から呪文でも唱えるように口元を動かし、祈禱でもしているようでした。どうも会場の運気を上げるというか、清めるようなことをしていたようですね。外国の報道陣が興味深そうに眺めてましたよ(笑い)。今回の安倍晴明に扮する演技にしても、菊地さんのアドバイスがあったようですよ」(連盟関係者)

 すでにゆづファンの間で有名な、あのパワーストーンのペンダントも菊地氏の製作。タイから取り寄せた特別な石に、チャクラ(サンスクリット語で輪、円)の図や梵字のようなものが書かれたシールを貼り、菊地氏の発する気が込められているという。

「どんな効果があるのか、科学的な実証は難しいでしょう(笑い)。でも、ぜんそくの持病に苦しむゆづクンにとっては、呼吸が楽になるそうで、手放せないペンダントなんです」(前出・フィギュア関係者)

 ただ、今回の振り付けは、昨シーズンのフリー『オペラ座の怪人』と一緒でシェイ=リーン・ボーン氏が担当している。

「ボーンさんがとても興味を募らせたからで、日本色を抑えるためでもあったとか。また、“リンク全体が雲に覆われ、暗闇が包む中、光と太陽が差し込む”という具体的なイメージも気に入ったそうです。演技力が問われるだけに、ステップ力を磨くという課題にもピッタリで、かつ外国人にとっても神秘的で新鮮に映るだろうという狙いもあった」(前出の連盟関係者)

 陰陽師を題材にした初の和風プログラムは、羽生サイドの狙いどおり、初戦の『オータム─』のジャッジから好評価を得たのだった。