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「1982年から今までに、当校の卒業生から30人ほどが宮内庁の職員に採用されています」

 そう誇らしげに語るのは、埼玉県立熊谷農業高校の朝比奈永晋先生(61)。実はこの高校、10月20日に80歳・傘寿の誕生日をお迎えになる皇后美智子さまと、半世紀以上にわたり交流のある学校なのだ。

「当校から皇室へは1964年から毎年、鈴虫を献上していて、この9月10日には51回目の献上をさせていただきました。今回も、皇居と東宮御所と秋篠宮邸にうかがいましたが、宮邸では秋篠宮ご夫妻がちょうどいらっしゃり、生徒たちにお声がけしてもらう機会に恵まれました」(朝比奈先生)

 リーン、リーンと澄んだ声で鳴く秋の虫を50年間、差し上げているとは――。美智子さまも毎年、楽しみにされているのだろう。毎年、3万~4万匹の鈴虫を生物生産工学科の生徒8人ほどで飼育し厳選。

「農業高校の当校では、昆虫は鈴虫と蚕を飼育していますが、そもそもは現在の皇太子さまが3、4歳のころ昆虫に興味を持たれたのが献上のきっかけだったと聞いています。それを知った学習院大学の教授から、教え子だった当校の教諭に打診があったそうで、埼玉県知事らとパトカーの先導で東宮御所に鈴虫をお届けしたのが最初だということです。それから毎年、途切れなくお届けしていて、私は40年以上、指導を担当しています」(朝比奈先生)

 生き物を皇室に献上しているのは、この学校の鈴虫だけだという。

「両陛下が皇太子同妃時代に東宮御所へお届けしたときには、応接室に通されて、お茶をいただいたことも何度かありました。毎年、陛下からは、“美智子ともども、鈴虫の音色を楽しみにしています”というお言葉をいただくので、懸命に飼育に励んでいます」