感動の渦に包まれたフィギュアスケート世界選手権をもって、'15 ―'16年シーズン公式戦も閉幕。浅田真央の復帰や、宇野昌磨の躍動、羽生結弦が歴代最高点など激動のシーズンを識者に解説してもらった。

 12月のグランプリファイナルでは、同門のハビエルが2位、宇野が3位に入賞した。そんなハビエルが、アメリカのスケート専門サイト『icenetwork』でこう語っている。

「ユヅとはお互いのスケートを見て楽しんだり、アドバイスしたり、笑い合ったりする。ストレス? まったくないよ」

 解説者の村主千香さんは、この言葉について分析。

「ハビエル選手は今シーズン、演技の後半にある4回転ジャンプが決まらない試合が多かった。一緒に練習している羽生選手を見ながら自分を鼓舞して、グランプリファイナルを終えてからも、ジャンプの調整を行っていたのだと思います。ライバルが近くにいるなんて、素晴らしい練習環境ですよね」

 そして、記憶にも新しい3月26日~4月3日まで行われた世界選手権。もちろん、ここでも羽生に世界中の注目が集まった。しかしショート前の公式練習では、

「カザフスタン代表のデニス・テンと激突しそうになりました。張りつめた緊張感の中でのアクシデントでしたね」(村主さん)

 その後、見事にショートを滑り終え、このまま突っ走るかと思われたが、フリーでは精彩を欠き、安定した演技で300点を超えたハビエルが連覇を遂げた。

 試合後には、羽生とテンが手をつないだ写真がテンのインスタグラムにアップされ、こう仲直りを報告した。

「空は今日も平和だ」

 男子が前人未踏の得点争いに入った一方、女子では浅田真央が復帰を果たす。

「10月のジャパンオープンで跳んだトリプルアクセルは、休養に入る以前よりも素晴らしく、大人の魅力を感じる滑りでした。しかし、その後の試合ではショートとフリーをそろえて成功させられませんでした」(村主さん)

 世界選手権でようやく、シーズンベストを更新。試合後は笑顔で、こう答えた。

「選手として復帰した以上、自分の実力を上げていかなくては、と思う。勝ちにこだわっていきたい」

 “現役続行”とも取れるこの発言に、ドラァグクイーンでフィギュアスケートファンのエスムラルダさんはこう話す。

「女子では跳べる選手の少ないトリプルアクセルだけど、果敢に挑んでいく真央は“スポーツを見ているなぁ”って感じられてすごく好き。でも、世間からの“アンタはトリプルアクセルを絶対成功させてよ!”みたいなプレッシャーが目に見えていて、かわいそうだった」

 今後のフィギュア界を担っていくであろう脅威のスケーターが登場。ロシアの新星、エフゲニア・メドベデワだ。

「優勝? 当たり前です」

 インタビューでも、自信に満ちた発言を。グランプリファイナル、世界選手権で2冠を達成している。

「ジャンプの美しさや工夫で加点がつく“新採点方式”で育ってきた若手選手に比べて、ベテラン勢は加点がつく工夫を取り入れるのに苦労します。今までの習慣がありますから。メドベデワ選手の片手を上げてのジャンプなど、最近の選手は工夫をしたうえで、確実に高難度のジャンプを跳んできます。あらためて、その強さを感じました」(村主さん)

 世代交代はロシアだけではない。日本でも“ミス・パーフェクト”の称号を獲得した宮原知子が活躍し、頭角を現している。それでも彼女は貪欲。

「オフシーズンはバレエを習いに行く!」

 技術向上に余念がない。

「宮原選手の安定感は、練習の賜物。彼女と同門には、世界ジュニアで優勝した本田真凜選手もいる。違った魅力を持つ2人が、来シーズンに向けて切磋琢磨するでしょう」(佐野さん)