詐欺罪に問うことはできるのか

 Aさんは「詐欺の被害にあった」と主張するのだが、そもそも、“愛人契約”は法律上、成立するのだろうか? 離婚・男女問題に詳しい、ゆい法律相談事務所の中田充彦弁護士に話を聞いた。

「民法90条では、“公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする”とされており、このケースのように、不倫関係をもつことに対して一定の対価を支払う契約は、公序良俗に反するものと考えられますので無効になります」

 では、“騙された”ということで詐欺罪に問うことはできるのか。

「女性を騙して売春の代金を免れたとの事実について、詐欺罪で起訴されたケースで、詐欺罪の成立を認める裁判例と、“そもそも民事上無効な契約であるため、刑事上保護する必要がない”との理由で詐欺罪の成立を否定する裁判例があり、判断はわかれています。

 愛人契約についても同様であると考えられますので、必ずしも詐欺罪で処罰されるとは限りません」

 中田弁護士は、こう続ける。

「なお、腹いせに奥さんにバラすということは控えた方がよいと思います。なぜなら妻から見れば愛人は単なる不倫相手ですから、奥さんから訴えられ、不貞慰謝料を支払わなくてはならなくなる可能性があるからです。

 また、”ラクに稼げる”ということですが、安易に飛びつかず、リスクを十分に知ったうえでやっていただきたいと思います。ただ,個人的にはこういうことはしないのが一番だと思いますけどね」