「新曲に関しては、最初、自分で書かずにお任せしようと思っていたんです。でも、レコーディングが進んでいく中で、プロデューサーから“中村あゆみの言葉を待ってくださっている人がいるんだから、未来を感じてもらうためにも自分で書かなくちゃだめだよ”って言われて。それじゃなくても、昔の音源で歌うことで死ぬ思いだったのに(笑)。だって、キーは変えられないし、当時以上にクオリティーの高いものを作り上げないといけない。ものすごく神経質に、ひと事ひと事レコーディングしたから」

 その苦労のご褒美か、今後の彼女の音楽性がはっきりと見えてきたという。

インタビューに応じる中村あゆみ
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「目指すところを見つけちゃった! 女性では、まだ誰も踏み入れていない聖地みたいな場所を。欲張りで、好奇心旺盛だから、これまでいろいろなことをやってきたけど、紆余曲折の末にたどり着いたの(笑)」

 とびきりの笑顔で語る中村の話を聞いていると、こちらにも彼女の熱が伝染して、ワクワクしてくる。この、“聴く人を奮い立たせるパワー”は30年前から変わらない。デビュー当時と変わらない、スレンダーで抜群のプロポーションを誇る彼女に、どこからその力が生まれてくるのかを聞くと、

「それは、ヘコむ時期があるから。15〜16歳ごろの反抗期のときは、本当につらかったからね。20代で結婚して幸せになるはずが、そうじゃなくなっちゃった。あのときは、人には言えないくらい大変だった。再婚して、今度はシングルマザーになって。いっけんカッコよく見えるかもしれないけど、ぜんぜん違う。髪の毛振り乱しながら子育てして、家のドアを出た瞬間に中村あゆみに変身してきた。

 でも、どうせなら悲しいとか、つらいとか、悔しいとか、そういうものをエネルギーにして昇華させていくほうがいいじゃない。歪んだ方向に行くより」

 幼少期に、両親が離婚した。大阪で父親と生活を始めるが、再婚相手の女性に反抗して家出し、福岡の実母のもとへ。歌手を目指し、ひとり上京すると、定時制高校に通いながら、年齢をごまかし毛皮や貴金属を売りながら生計を立てていたという。

 ついに念願が叶い、歌手としてデビューした中村。トップスターの道を歩みながらも、出産を機に音楽からしばらく離れる。そして、シングルマザーとなった彼女は、再び、ロックシンガーとしてこの世界に戻ってきた。