実際、テレビに出演する側は、わかりやすい内容にするのはもちろん、ゆっくり喋るようにしたりと、それぞれ努力をしていると思います。なぜなら、高齢者の方たちも見ているから。わかりやすい喋り、わかりやすい笑いが求められているわけですしね。

 つまり、決して日本のお笑い芸人さんたちは、大衆受けするようなお笑いしかできないわけではないんです。多くの場合、TPOに合わせているんですよね。

テレビだけがすべてではない時代へ

 昔は発信する場が主にテレビに限られていましたが、近年では、SNSなどを通して自ら発信することもできるようになりました。

 それによって、テレビ以外のところでも判断してもらえるようになったんですね。テレビでは見せていない一面があるんだと、もっと引き出しがあるんだということをアピールする場を持てるようになったおかげで、さまざまなタイプの仕事をいただく機会が増えました。

 最近ではAbemaTVのように、チャンネルも分散化しているので、他と差別化を図るため、マニアックなジャンルにも需要もあるんです。

 私自身、タレントという肩書きでありながら、エジプト革命後、さまざまなニュースや討論番組に呼んでもらえたことがあります。それは、私が自身のブログに、エジプト情勢についての意見を長文で綴ったからです。

 実際にそういうことも多々あるので、最近は情報番組やディベート番組への出演を目指して、時事問題を勉強している芸人さんもいるくらいです。

 メディアが細分化するにつれ、テレビ向きではないお笑いを表現できる場も増える。さらには、お笑い以外の自分を出せる機会も、自らのアピール次第で得ることができる。

 そういう意味では、日本のお笑い芸人、とくにテレビではあまり日の目をみなかった芸人さんたちの時代が「始まった」んだと思いますよ。

《構成・文/岸沙織》