海外取材中の危機にSHELLYは…

 プロデューサーがそう褒めていた。そして、その実例として、彼女がリポーターとして海外取材に行ったときの様子を話してくれた。

 ある国での取材中のことだ。いきなり警察だか軍人だかが来て、取材を止めるように言ってきた。一応許可をとってはあるのだが、国によってはしばしばこういう事態が起きる。

 下手な抵抗をするとこれまでに撮影したデータを没収される恐れもある。カメラマンはおとなしくカメラを下ろした。ただし、電源は切らず、カメラを回したままで。これは報道系の取材ではよくやる手だという。カメラを止めたふりをして、音声だけをとり続けるのだ。音声だけでも事態は伝わる。

 手慣れた記者なら、そのままリポートも続ける。とはいえ、普通にリポートをしていたらバレバレだ。だから、カメラマンや他のスタッフに話しているかのような自然な口ぶりで周囲の様子を伝える。日本語がわかる人が聞いたら多少は不自然な会話に聴こえるかもしれないが、ここは海外、相手には内容まではわからない。

 しかしそんな機転が利くのは、この手の取材経験のある記者や局アナぐらいだろう。バラエティー番組のロケしかやったことのないタレントなら、カメラを下ろしたところでリポートするのを止めてしまうはずだ。でも、SHELLYさんはリポートを続けたそうだ。記者と同じやり方で。

「たぶん、池上さんを見て、学んだんでしょうね」

 プロデューサーは、そう推測していた。

『ジパング』には池上彰さんも何度か出演し、そのリポートの様子が流れている。その中に同様の局面があったのだろう。誰からか教わるのではなく、彼女は番組を見て、自主学習したのだ。

 現在、テレビ業界に女性MCは数少ない。特に報道からバラエティーまで幅広いジャンルに対応できる人となると、さらに限られる。今後、女性MCとしてさらなる活躍をしてほしいとの期待をこめて、SHELLYさんには「未来の優秀メイン女性MC候補賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。

【プロフィール】
◎山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『世界何だコレ!?ミステリー』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。