タイへの訪問前に立ち寄ったベトナムの古都・フェでも歓迎をお受けに(3月4日)

 天皇陛下による「退位」のお気持ち発表から7か月。すでに「準備」と思われる動きが始まっているとみられるが、譲位に向けた陛下の「おことば」の“解釈”や“真意”についてはさまざまな意見が出されている。

 そんななか、「昨年のおことばは、美智子さまを心配して、公務の負担を軽減するためのお気持ちの表明だったのではないかと思います」と話すのは、天皇陛下とは学習院高等科時代に同級生だったコントラバス奏者の安保日出男さん(83)だ。

「陛下は美智子さまという個人をお好きになったので、美智子さまが旧皇族でも一般人でも関係なかったと思います。

 自分が好きになり結婚された美智子さまが、ほとんど陛下と公務を同じくして高齢になり大変な思いをされています」

 美智子さまをそう慮る安保さんが、半世紀以上前の陛下との思い出話を語る。

陛下とは、クラスは別でしたが、漢文の授業と音楽部ではご一緒させていただきました。漢文は当時、諸橋轍次先生という漢字研究の大家が受け持っていましたが、陛下はお得意ではなかったようです。

 授業中の小テストで隣に座っていた私に、“みせてよ”と声をかけられ、お手伝いをしたことはいい思い出になっています

 音楽部ではチェロを担当していた陛下が、注目される存在ゆえに「重圧」を感じ、練習に励まれていた印象も残っているという。

 安保さんは現在もジャズを中心に、コントラバスを演奏するが、音楽仲間が美智子さまからあるリクエストを受けて協力したことがあるという。

「実は、美智子さまはハワイアンミュージックがお好きなのですが、聴く機会がないとのことで、8年前に私たち音楽仲間でCDを自主製作して差し上げたことがあります。

 ハワイ語で『月光の歌』というタイトルの、この世に12枚しかない8曲入りのCDを美智子さまに贈ったところ、陛下とともにかなりお喜びだったそうです。

 昭和20年代の青春時代を思い出していただいたかもしれません。退位後にお時間ができたときには、生演奏をお聴かせする機会があればいいと思います

「疲れた」「つらい」からではなく「全身全霊」で象徴としての務めを果たしていくことができなくなったから─。というのが陛下のおことばの趣旨だったと思われるが、長年の苦労や不自由さを知る旧友たちだからこそ、決して口には出さない陛下の“本音”を感じとっているのかもしれない。