「昨年の五月場所で大鵬を超え、歴代最多となる37回目の優勝を達成。ある種の満足感があることは間違いありません。今、彼の頭の中にあるのは優勝記録よりも、魁皇が持つ1047勝の歴代最多勝ち星に並び、超えることでしょう(※先場所末時点で、白鵬の通算勝ち星は1019勝)。

 ただ、本人がそう思っていなくても、衰えや陰りが見え始めたという見方をされてもやむをえません。事実として4場所、優勝から遠のいていますから。この屈辱から気持ちを切り替え、やる気さえ出せば、私はまだあと3回や4回の優勝は十分ありうると見ています」(杉山さん)

※この記事の内容は開幕前の取材に基づいています。横綱・白鵬は右足などの負傷で春場所5日目の16日から休場しました。​

大関も新旧交代? 琴奨菊は復活なるか

2017年1月27日、明治神宮で奉納土俵入りを行った稀勢の里。ひと目見ようと集まったファンは1万8000人! 貴乃花の2万人に次ぐ多さだった。撮影/渡邉智裕
2017年1月27日、明治神宮で奉納土俵入りを行った稀勢の里。ひと目見ようと集まったファンは1万8000人! 貴乃花の2万人に次ぐ多さだった。撮影/渡邉智裕
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 大関から陥落した琴奨菊は、今場所で2ケタ勝てば大関に復帰できるが、

「琴奨菊ファンの方には大変申し訳ないんですが、彼には非常に厳しい場所になると私は見ています。“今までよく頑張った”と温かい拍手を送ってあげてほしいと思います」

 と杉山さん。また紺野さんも、

「ぜひ戻ってほしいと思いますが、どんな強い力士でも、その地位にずっととどまることはできないので……。堂々といい内容の相撲を取ってほしいです」

 照ノ富士は角番。負け越せば大関陥落となるが、

「強気な力士ですし、ギリギリ勝ち越して、踏ん張るんじゃないかと思います。正直、稀勢の里よりも早く横綱になると思っていたんですが、ケガが……」(山根さん)

 一方、新大関候補と目されているのが、高安。

「先場所2ケタ勝ったので、今場所も2ケタ勝って、来場所は大関取りに、ぜひ挑戦してほしいです。同部屋の兄弟子・稀勢の里の援護射撃にも期待します」(山根さん)

「去年の大関取りは失敗しましたが、もう間違いなくいくと思いますね」(紺野さん)

 千秋楽に賜杯を抱くのははたして──?

<プロフィール>
◎杉山邦博さん
相撲観戦歴64年。’53年にNHK入局。’87年の定年まで一貫して大相撲実況を担当。東京、メキシコ五輪をはじめ、各種スポーツ実況も。現在は東京相撲記者クラブ会友、日本福祉大学客員教授など。

◎紺野美沙子さん
相撲観戦歴約50年。慶應義塾大学在学中にNHK連続テレビ小説『虹を織る』のヒロインで人気を博す。テレビや映画はもちろん、国際協力の分野でも活動中。’10年より『紺野美沙子の朗読座』を主宰。

◎山根千佳さん
相撲観戦歴18年以上。『37thホリプロタレントスカウトキャラバン2012』を経て、芸能界デビュー。バラエティー番組を中心に活躍中。家族そろって好角家で、物心がつく前から相撲を観戦している。