今年の流行語、最有力候補の「忖度」が、ドラマの世界も席巻! かつて栄華を極めたフジテレビの“月9”は、2週目で視聴率ひとケタに。“質より量”のジャニーズ商法を、週刊女性でおなじみの超辛口コラムニスト、今井舞さんが“忖度”せずジャニーズ春ドラマに斬り込みます!

 高視聴率のヒット作を連発して、フジテレビ黄金期を築き、長いことドラマ界の最高峰ブランドだった「月9」。しかし、近年は視聴率ひとケタが当たり前という低迷にあえいでいる。

 放送開始30周年の節目に当たる今期、“社運をかけた作品を”と公言して作られたのが『貴族探偵』(フジテレビ系)だったのだが……。

「いちばんやっちゃいけないヤツ来たー!」

 と、あきれ顔の今井さん。

「視聴者に面白いものを提供する、というドラマの大前提をガン無視し、芸能事務所と広告代理店、スポンサー、局上層部の意向だけ忖度。月9ブランドが地に落ちた原因を、すべてなぞって傷口を広げたうえに塩を塗るという。

 ただ相葉雅紀を主演に据えるためだけに作られたのが丸わかりの張りぼてドラマ。いつもの棒演技の相葉が、ハロウィンみたいな衣装着て使用人を侍らせ登場したら“貴族”一丁上がりの安普請。

 ミステリーの手法にも目新しさは皆無で、これみよがしに並べた豪華キャストも、文字どおりただ並列で立っているだけ。中山美穂にヒラヒラのメイド服着せて出せば視聴者が喜んで毎週見るとでも……思っているんでしょうねぇ。

 他局の『逃げるは恥だが役に立つ』がなぜヒットしたのか、ちょっとでも考えたら、こんな浅薄な作品を胸張って世に出せるはずないんですが。心を入れ替えて頑張るって追いすがるから振り返ったら、いきなり横面はたかれたような気分です。“これからもウチはこれで行く”という、フジテレビから視聴者への、訣別宣言とも取れる作品になりましたね」

 また、観月ありさが風変わりな標本士に扮する『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(フジテレビ系)にもおかんむりだ。

「原作では20代女性と男子高校生がコンビを組むのに、観月ありさとKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔という年増な組み合わせに突貫工事。全力で年をうやむやにしながらパッツン前髪で大仰な演技という観月を見ていると、“なぜ今、観月ありさ?”という違和感しかないですが。すべては彼女の“連ドラ主演登板26年”の新記録作りのため。初回6%台という低視聴率にも納得です」

 亀梨和也、山下智久がW主演する『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系)、『リバース』(TBS系)の玉森裕太、『母になる』(日テレ系)の中島裕翔と道枝駿佑、深夜枠で主演する中丸雄一の『マッサージ探偵ジョー』(テレビ東京系)も、“ジャニーズ”が並ぶ。

「“志村、うしろうしろ”みたいに“亀梨、メイクメイク”と叫びそうになる、大衆演劇レベルの亀梨の濃いメイクにア然。眉毛、アイライン、ノーズシャドー、ドーラン、すべてがヒロイン役の木村文乃より盛られ、ふたりが並ぶとラブストーリーより顔が気になって……。

 ライバル役の満島真之介と木村のシーンは、顔も演技も自然で、見ていてこっちを応援したくなる。亀梨の部屋に出てくる“神”役の山Pは、ここぞというときだけ登場すべき役どころなのに、出番多すぎ。過剰なファンサービスは、ファン以外の視聴者を鼻白ませます。

 誰も振り向かなかった荒れ地をコツコツ耕してきたテレ東の深夜枠。いいものを作ると評判になったとたん“YOU、ウチにも枠作ってよ”とズカズカ土足で上がり込む、ジャニーズ事務所の厚かましさに開いた口がふさがらない『マッサージ探偵ジョー』。ここに押し込んだ主演の中丸といい、玉森といい中島といい。局をまたいだ怒濤のゴリ押しには、恐怖すら感じます」

 しかし、例外もある。

「『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)の井ノ原快彦は、年寄り向けのニーズに合致した、“彼でないと”の雰囲気が醸造できています。長瀬智也や岡田准一のような、作り手が使いたがる役者を出演させていかないと。

 ジャニーズに限らず、事務所に言われるがまま実績も実力もないタレントを出しまくっていたら、ドラマ界は滅びてしまいます。本当に今どうにかしないと、テレビ局と事務所は共倒れになりますよ」

 と、警鐘を鳴らす。