老後に備えて貯めたお金が消えてしまう―。「少なからぬ“虎の子”を持っている中高年が、お金に対する無知や財産管理意識の甘さからそんな状況に陥ることがあります。
最悪、詐欺ですっからかんに……というケースも」とお金の専門家。「自分は大丈夫」という過信は絶対に禁物と釘を刺す。
周囲の人に相談することが大切
「つい信用してしまいそうな詐欺の手口があります。どんな誘い、どんな言葉にもまずはひと呼吸置いてから。さらに周囲の人に相談することが大切です」
そう話すのはファイナンシャル・プランナーのまるこいずみさん。ライフワークとして生活困窮者の自立支援も行っている。まるこさんはこれまで、数々のお金に関する相談にも乗ってきているが、最近では詐欺例もあったそうだ。
「ロマンス詐欺に引っかかったのが埼玉県在住の中年男性のAさん。海外在住の女性とSNSを通じて知り合い交際をしていましたが、ある日、彼女から“真剣に結婚を考えているから、これからの生活に必要なお金をAさんに送金したい”という申し出があったそうです。
“送金してくれ”ではなく“送金したい”と言われたら、相手の誠意や本気度を感じますよね。ところがAさんが口座を教えたところ、その口座は凍結されてしまったのです。調べたところ、マネーロンダリング(資金洗浄)に使われたかもしれないと。
であればAさんはクレジットカードの決済もできなくなってしまいます。その後、女性からの連絡は途絶えたそうで、こうしたケースは個人ではなく、裏には犯罪組織がいる可能性もあります」
また大阪府在住、元大学教授のBさんは“善意”がもとで、虎の子の退職金の一部を失うはめになった。
「インターネットを通じ、ある女性と知り合ったのです。複雑な親のもとに育ち、経済的に恵まれない若者の自立支援のボランティアをしている、とのこと。
以前は教員だったこともあり、Bさんはボランティア活動維持のための支援を求められると快く寄付。“Amazonギフトをネットで送ってほしい”という要求に次々と応えてしまったのは、“両親に捨てられた学生がいる”、“食事も満足にとれていない子どもを助けて”というその女性が醸し出す切迫感と、言葉巧みさからだといいます。
また寄付するごとに褒められて、自分はいいことをしているという満足感もあった。しかし、多くの金額をつぎ込んだのち、なんだかおかしいと思ったときには後の祭り。そのボランティア組織は架空のもので、女性もスタッフではなかった。単なる詐欺でした」

ファイナンシャル・プランナーで精神保健福祉士の石川智さんはロマンス詐欺などの事例は地方こそ深刻だという。
「地方のほうが都市部より人間関係が親密な場合があります。いいことなのですが、ちょっと噂が立てば、すぐに広まってしまうようなことも。なので、こうしたことは相談がしにくい。子どもと同居している世帯でもだまされた恥ずかしさが先に立ち、一人で抱え込んでしまうんですね。表に出ていないだけで、こうした事例は決して少なくないと思いますよ」(石川さん)
訪問系の詐欺も地方では多いという。
「貴金属の買い取りを口実にして、ターゲットにした家に入り込み、お金があるかどうかを確かめるといった手口があります。田舎では鍵もかけずに出かけてしまう人もいる中、比較的容易に家に上げてしまうケースが多いのかも、と推測します」(石川さん)