ハーボニーの調剤を行うことが多いという京都府の保険局に勤務する剤師Yさんは、「期限切れによる医品のロスなどを軽減するために、非正規流通経路に興味を持っていました。しかし、ハーボニーの事件以降、利用は考えていません」と言う。

局は患者様に偽造医品が渡らないようにする最後の砦です。偽造医品は健康被害を与えるだけではなく、命の危機にさらすおそれすらある。今後はこれまで以上に患者様を偽造医品の被害から守るという意識を強く持ち、医品の供給に携わりたいです」(剤師・Yさん)

 また、坪井氏も「今回は、非常にまれな例。局が正規のルートで医品を購入していれば、今後、国内で同様の事件が起こることはまずないと考えられます」と語った。

 現在、偽造医品が患者の手に渡らないよう、局で食い止めるための防止策の策定が国を挙げて進められている。6月8日には厚生労働省医・生活衛生局の『医療用医品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会』において再発防止策が発表され、1日も早い施行が待たれている。

 実は、ハーボニー配合錠だけでなく、私たちが日ごろインターネットで購入している医品の半数近くが偽造医品だということをご存じだろうか。

「国内で被害にあいやすいのは、店頭ではなく、インターネットを通して医品を個人輸入するなど、通販を利用した場合です」(坪井氏)

 そうはいうものの、大半の人は「まさか」と思うだろう。だが、私たちが考えている以上に、偽造医品の脅威は身近にあるのだということを示すデータがある。

 昨年、国内で勃起不全(ED)治療を製造・販売している4社の製会社が合同で実施した偽造ED治療に関する調査によると、インターネット経由で発注・入手した治療のうち約40パーセントが偽造医品だったことが報告されている。

 また、少し古いデータになるが、'06年にはWHOからも、所在地を隠匿した非合法なサイトから購入した医品のうち50パーセントは偽造医品であるという調査結果が発表されている。

 さらに、'11年には国内でED治療の偽造医品を飲んだことが原因と考えられる健康被害が2件発生した。1件は海外からの個人輸入を服用後、一命はとりとめたものの、副作用と考えられる脳血栓が確認され、もう1件は、いまだに因果関係は明らかにされていないが、間質性肺炎を起こし死に至ってしまっている。病院に搬入された際、この患者のポケットから偽造医品が見つかっており、患者宅からも数種類の偽造医品が発見されたという。

 これ以降、偽造医品による重大な健康被害は報告されていないが、安心はできない。

「もしかしたら偽造医品を服用した人が見過ごしてしまうくらいの軽い健康被害が出ている可能性があります」(坪井准教授)

 例えば、海外でやせとされる漢方に、うつ病の治療に用いる選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)含有の偽造医品が見つかった事例がある。