ゼリーじゃないゼリーとフライじゃないフライ!

■行田フライ(埼玉県行田市)

 生地がうすいので焼くのも食べるのも手軽、まさに昔のファストフード! 布を裁縫する女性たちが食べていたので「布来」と当て字されたとの説もある。当時は「フライ」という語感のハイカラさが重要だったのだろう。

行田フライ(埼玉県)

  ☆   ☆   ☆  

 埼玉県・行田市のソウルフードといえば「ゼリーフライ」と「行田フライ」。この2つの軽食、どちらもネーミングがややこしい! 

 まず有名どころのゼリーフライ。ゼリーといってもゼラチンを固めたお菓子とは関係なく、ジャガイモとオカラを練って揚げたもの。形が小判型だったので「銭フライ」と呼んでいたところ、それがゼリーフライになまったという説が有力。『一福茶屋』の店主・大澤常八氏が売り出し、明治後期には行田の名物おやつとなっていた。

 そしてもうひとつの行田フライ。地元民はただ「フライ」と呼ぶが、実は揚げものにあらず! みじん切りにしたねぎや肉の具材を溶いた小麦粉に入れ、鉄板で薄く焼く調理法で、クレープ風お好み焼きといったところ。行田はもともと足袋産業が盛んだった街。昼休みもろくにない足袋工場で働く女性たちが手軽に食べられて腹持ちするものを求めたのが始まりだという。大正時代からの発祥店のひとつ、『古沢商店』の2代目店主はこう語る。

「働く人の街だから、仕事の合間にさっと食べられないとね。普通のお好み焼きみたいにのんびり食べてちゃダメだもの」

 ゼリーフライと行田フライ、どちらも忙しい工場の街ならではの軽食なのだ。

見た目はコロッケ、でも甘い! 驚きの美味しさ

■文化フライ(東京都足立区)

 ドーナツ的な食感を想像するが、意外や外側はカリッと、中はもっちり! 

 ある意味、粉ものの究極形ともいえるのが、東京・足立区を中心に伝わる『文化フライ』。レシピは簡単。シロップを加えまとめた小麦粉にパン粉をまぶして揚げ、たっぷりソースをかけて完成。小麦粉ON小麦粉、余計な具材はなし。この徹底ぶりは感動もの!

 文化フライは昭和30年ごろから、西新井大師の縁日など下町の露店で売られていた。そのルーツは千葉・浦安の『玉子フライ』(卵と山芋を小麦粉に練り込み揚げたもの)。それをヒントに長谷川商店の店主、長谷川まさこさん(通称・長谷川のおばちゃん)が文化フライを考案、命名したという。長谷川さんは’06年に永眠、今では文化フライの姿は縁日で見られない。

 だが、ご安心を! 東京・北千住のお好み焼き店『宏月』の通常メニューとして食べられる。店主いわく、「うちが長谷川さんの味をいちばんちゃんと継いでるから!」と心強い。

 極限にシンプルだからこそ、小麦の香りが際立ち、予想を超えた香ばしさとうまさを味わえる料理だ。