静岡県富士市には『ママ部!』がある。今年5月に産声を上げたばかり。そこでも求められているのは「地域の魅力を発信するためのお母さんたちの目線」だ。

 同市担当職員が説明する。

ママ友、同じ境遇の友達がいない、何かやりたいけどやり方がわからない、という悩みや孤独を感じる人も少なくありません。でも、SNSを活用した情報発信なら気軽にできる。今はスキル習得のための講座を開催しています」

 ママさんの発信力に自治体が期待するのは、近い将来、日本が直面する人口減社会にどう対処するのか、どうにかして自分の住む地域の人口減は食い止めたい、という本音から。『ママたち』が発信する生活実態、等身大の暮らしの彩りが、どんな広告費を投じても得られないような発信力になっているのだ。

お母さんの孤立を避ける

 地域の人口が減らないことはいいことずくめなのである。そのことを、まちづくりや地域活性化などに取り組む一般社団法人『いなかパイプ』の佐々倉玲於さんに聞いた。

「少子高齢化で地域の人口が減少すると教育や医療環境の質が低下します。いくら自然は豊かだとしても、子育て環境としてはいいとはいえません。でも、子育てをする世代が増えれば維持できます」

 以上が1点。もう1点は、

「専業主婦になれば、1日の大半を子どもとのみ過ごします。これが毎日続くとストレスがたまり、追い詰められてしまうことがあります。息抜きや社会とのつながりを持つことは、とても大切です。お母さんの孤立を避けるためにも、こうした活動が効果的ではと考えられていると思います」

 子育て世代の人口を増やすため移住を促す取り組みに本腰を入れている自治体もある。

 静岡県藤枝市。今春、移住促進雑誌『さとやママ』を発行した。中山間地域の少子高齢化を食い止め、子育て世代の人口増加を狙う同市が、里山暮らしの様子を移住した母親目線でまとめた冊子だ。

「5家族に登場してもらい、移住してよかった点、大変だったところなど率直に話してもらっています。冊子を読んで引っ越し準備をしている子育て世代の家族もいます」と同市担当者。さらに、

「移住体験ツアーも行っています。先に移住した人たちと、移住前から交流できれば、移住後にも相談できる関係性を構築できます。実際の暮らしぶりを見ながら、交流、相談ができるのも魅力です」

 と効果を実感し、成功の理由を「市と移住者がタイアップしたプロモーション活動ですね」と明かす。