2年間の在宅介護の後、養護施設で5年間、計7年に及ぶ介護に終止符が打たれたのは昨年6月のこと。だが、実母を旅立たせた彼女がひと休みすることはなかった。

「ひょっとしたら自分も認知症になるかもしれない。そのときに、どんな介護施設を選べばいいのか。介護者が本当に満足する介護とは何なのか? いろんな疑問が浮かんで、それなら実際に施設で働いてみるのがいいんじゃないかと思ったんです」

 約1年半、介護施設で働き学ぶことも多かったというが、“人のために役立つ資格が取りたい”ということで、今年1月、介護の仕事を離れた。

「今は心理カウンセラー、シニアピアカウンセラー、終活ライフケアカウンセラーの資格を取りたいと思っているんです。あと日本語教師の資格。今年は、ジュエリーコーディネーターの資格も取りました。いずれ施設に入ってもお役に立てるようにね(笑)」

 常に人生に貪欲(どんよく)だが、このほど上梓(じょうし)した『60歳。だからなんなの』(さくら舎)には60歳を越えた彼女の“バイタリティー”がぎっしりと詰まっている。

「いい年なんて言っていられないわよ。やりたいことがいっぱいあるんだから。資格も取りたいけど、家の断捨離もしなくちゃいけないし、愛犬のももを連れて船で世界1周もしたいし。でも、まだ暑いから腰が上がらないのよ(笑)」

9月6日に発売された著書『60歳。だからなんなの』(さくら舎)では、年を重ねてからも日々楽しく生きるヒントを綴っている。※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します
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自分の“生存確認”をしてもらおう

 そんな秋川が、もう10年以上も続けている大切な行事が『ごはん会』だ。

「子どもと母がいなくなって、部屋が4つも空いちゃったのよ。うちは3階建てで私はずっと1階にいて、あるとき3階のリビングに行ってみたら、ゴキブリが餓死してたの。生命力のあるゴキブリが餓死する家なんてまずいでしょ。当時はバーやレストランに集まってワイワイガヤガヤやっていたんだけど、家をきれいに維持するためにも、ゴキブリが生きていけるようにするためにも(笑)人を呼んだほうがいいかなって。それに自分の“生存確認”をみんなにしてもらおうと思ったの。“みんな”というのは近所の人やバーで知り合った若者たち。異文化交流も兼ねて、月に数回は家に集まって食事会をしています

 最近は回数も集まる人数も増え、数年前のお正月には40人近くも集まったという。またそのつながりで現在、自宅には日本人の男子学生2人が下宿しているそうで、

「『ごはん会』に来る若者に“アメリカからやって来る交換留学生の子たちに部屋を貸してくれないか”と頼まれたことがきっかけです。当時はシェアハウスなんて言葉がまだなかったから、シェアハウスの先駆けね。

 子どもたちは、“ママは他人と一緒に生活なんて絶対できない”って、大反対だったんだけど、外国人のほうが言葉が通じないぶんイライラしなくて楽でした。その後はその子の知り合い、またその知り合いというふうにつながっていって、うちから世界に巣立っていった子が何人かいます

 自宅が“シェアハウス”になっているというのもちょっと驚きだが、『ごはん会』にはこんな厳しいルールがある。

「何かにつけて若者に説教したがるジジ、ババは2度と呼ばない。マナーの悪い若者は2度と誘わない。老いも若きも、恋愛議論、政治議論、大いにけっこう。議論はしてもケンカはしない」

 これだけ元気なら20年後、いや40年後にも「100歳。だからなんなの」と、笑いながら言っているかも!?