1980~1990年代、芸能人参加型が主流に

 15分~1時間という枠で、家族そろって楽しんだクイズ番組。そこへ登場したのが、福留功男司会の『アメリカ横断ウルトラクイズ』(’77~’98年/日本テレビ系)。約1か月にわたって毎週放送されるスペシャル番組として始まるやいなや、見る者の度肝を抜いた。

「海外旅行が優勝賞品だった時代に参加者が外国に行き、クイズをやるというインパクトはすごかった」(大門さん)「スケール感のあるエンタメ・ショーであり、ショーアップの極致」(木村さん)と識者も口をそろえるように、規格外のスケールで高視聴率を記録。

 そして’80年代になると華やかな番組が次々スタート、日本のみならず世界中から集められたVTRをもとに出題する番組が続々誕生している。

 愛川欽也さん&楠田枝里子の司会コンビが好評を博した『なるほど!ザ・ワールド』(’81~’96年/フジテレビ系)、言い値でつけられた物の値段を現地の通貨で当てる『世界まるごとHOWマッチ』(’83~’90年/TBS系)がヒットを飛ばした。

 出題される問題も多岐にわたるように。当時のNHKのアナウンサー鈴木健二が知的なクイズを出題する『クイズ面白ゼミナール』(’81~’88年/NHK)、ジェネレーションギャップをコンセプトにヤングチームとアダルトチームが対戦する『クイズ!年の差なんて』(’88~’94年)などが人気に。

 世界中の不思議な問題を出題する『世界・ふしぎ発見!』(’86年~放送中/TBS系)は今や30年以上続く長寿番組だ。

 また一般視聴者が参加する番組として、『100万円クイズハンター』(’81~’93年/テレビ朝日系)が登場。司会・柳生博が “ハンターチャンス”のかけ声で人気となる一方、’80年以前に開始された番組が次々と姿を消していく。その理由を前出・大門さんは「’80年代初頭の“MANZAIブーム”にある」と指摘。

「当時、ゴールデンで放送されていたクイズ番組は、MANZAIブームの到来で終了してしまいました。そこへ『なるほど!ザ・ワールド』のようなVTRを見てトークしながら解答するという、タレントでしか成立しないような形態のクイズ番組が登場。

 バブル景気もあって予算が増えたため、答者が芸能人へと切り替わっていくんです。そこで“解答者同士の白熱した戦いが見たい”と揺り戻しのように生まれたのが『史上最強のクイズ王決定戦』(’89~’95年/TBS系)、『FNS1億2,000万人のクイズ王決定戦!』(’90~’94年/フジテレビ系)でした」(大門さん)

 しかし、問題が読み上げられ瞬時に解答するクイズ王たちのブームは、バブル後の番組の予算が削られる過程で終わりを迎え、あの『アメリカ横断ウルトラクイズ』も’92年で1度、歴史が途絶えてしまう。

巨泉~逸見~紳助という司会の変遷

イラスト/イケウチリリー
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 タレント解答者が増える傾向は、昭和から平成に入る前後でより顕著に。

「それまでクイズ番組を苦手としていた日テレが、タレント性を前面に押し出した『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(’88~’96年)や『マジカル頭脳パワー!!』(’90~’99年)で人気となります。

 これは当時絶好調のフジテレビに対抗するため、分刻みの番組作りで視聴者を引きつけ、チャンネルを変えさせない努力をした結果。

 そこでフジテレビは、その真逆、勉強をもとにした『たけし・逸見の平成教育委員会』(’91~’97年、以後不定期放送)を始めました」(木村さん)

 特定のジャンルに特化した難しいクイズを出題、答えを聞いても合っているのかさえわからないというマニアックな世界を愛する人たちが出場した『カルトQ』(’91~’93年/フジテレビ系)も人気を集めた。

’70年代にクイズを変えたのは大橋巨泉さん。圧倒的に番組を支配して、すべてをコントロールしていました。その後、’80年代から’90年代にかけて流れを変えたのが『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』でブレイクした亡き逸見政孝さんです。

 局アナがフリーになることが珍しい時代に、まじめだけどおもしろい、さらに進行がしっかりできる逸見さんは華やかなバブルの世相にフィットしました」(木村さん)

【’80~’90年代にスタートした主なクイズ番組】
■クイズ面白ゼミナール(’81年~’88年/NHK総合)
司会の鈴木健二が主任教授、解答者が学生になり問題に挑戦。視聴率が40%超えたことも
■わくわく動物ランド(’83年~’92年/TBS系)
世界の動物からクイズが出題。当時エリマキトカゲなどが人気で、当初から好視聴率
■マジカル頭脳パワー!!(’90年~’99年/日本テレビ系)
知識より頭の柔らかさを競う。『マジカルバナナ』などのクイズが一世を風靡
■たけし・逸見の平成教育委員会(’91年~’97年/フジテレビ系)
ビートたけしが先生として司会。ラサール石井や辰巳琢郎らが最優秀生徒を目指し火花を
■さんまのSUPERからくりTV(’92年~’14年/TBS系)
『ご長寿早押しクイズ』『サラリーマン早調べクイズ』などのコーナーが話題に
■カルトQ(’91年~’93年/フジテレビ系)
当初は深夜で放送され、「ブラックミュージック」などマニアックなテーマのクイズが