羽生の闘争心に火をつけたもの

 スケート解説者の佐野稔さんは、若手選手が羽生に与えた“刺激”が大きかったのではないかと語る。

「ここ数年ジュニア世代が伸びていて、ジュニアの試合でも4回転ジャンプを2種類以上跳ぶ選手も少なくありません。ジュニアを4回転時代に突入させたのは、かつての宇野昌磨選手だと思うんです」

 宇野やアメリカのネイサン・チェンは、すでに4種類の4回転ジャンプを試合で成功させている。羽生の闘争心に火をつけるには十分だ。

「オリンピックチャンピオンからしてみればランキングでは格下ですけど、羽生選手が持っていない武器を持っています。自分ができないジャンプを成功させているということは、かなり悔しいのではないかと思いますよ。羽生選手が新たな4回転ジャンプにこだわるのは、これが要因のひとつだと思います」(佐野氏)

 前回覇者として、1つでも多くの4回転ジャンプを跳んで勝つ。どこまでも高みを目指す姿はアスリートの鑑とも言えるかもしれない。だが、

「4回転を跳ぶことによって、ケガをする可能性も間違いなく上がります。ケガが選手生命に関わるようでは、元も子もありません。演技の難易度が上がれば、リスクも増えるということなのです」(前出・スポーツ紙記者)

 羽生も、今回のケガが長引くようであれば、平昌五輪にも影響してくるといえる。

「今シーズンはグランプリファイナル5連覇がかかっていました。オリンピックの前哨戦ともいえる大会なので、出場できなかったことは焦りにつながるかもしれません。

 しかし、あくまでも五輪での金メダルが目標です。オーサーコーチは“全日本選手権を目指して調整をしている”と語っていますが、現状は出場について未定であると述べています」(前出・スポーツ紙記者)

 日本男子フィギュアでの五輪出場枠は3人。右表のように、全日本選手権で優勝すれば自動的に出場権を獲得できる。

全日本での表彰台でもOKです。ただ、羽生選手の場合は今年出場した大会の記録もシーズンベストスコアが上位3人の中に入っているので、ムリを押して全日本に出場しなくても、代表に選ばれる確率は非常に高い。

 できるだけ早く彼の勇姿を見たい気持ちはありますが、万全な態勢で五輪に臨んでほしいですね」(前出・スケート連盟関係者)

 “絶対王者”の完全復活を祈るばかりだ。