本作のおばさんは、欲しがりません。

 女性数人で結託しての犯罪ストーリーといえば、直木賞作家・桐野夏生の『OUT』(講談社)が思い浮かびます。年齢も境遇もさまざまな女性4人が深夜に弁当工場でパートをしていますが、そのうちの一人がDV夫を殺してしまいます。相談した結果、死体をバラバラにして、遺棄することにします。計画の首謀者が最初にしたことは、仲間に報酬を提示することでした。

 しかし、このドラマでは、なぜか何の証拠もメリットもないのに、しのぶに全員が肩入れ。再犯者として刑務所に入るリスクも考えず、復讐を誓っています。

 金だけでなく、おばさんは未来も欲しがりません。勝田千夏は復讐作戦の時間稼ぎとして、前から興味を持っていた吾郎とセックスしますが、継続的な関係は求めませんし、仲間を裏切ることもしません。

 隙があって、愛情深く、怒らない(怒っても怖くない)、恨まない、裏切らない、金という見返りも欲しがらない。クドカンの書くおばさんは、「血のつながりはないけれど、変わらずに自分を許してくれる母親のような人」と言えるのではないでしょうか。男性から見ると、大分都合の良い存在です。

 クドカンは、ある日突然若い女性が、おばさんという“違う生き物”に変異すると思っているのかもしれませんが、女性という同じ生き物です。当然、おばさんにも欲はあります。若い女性とおばさんの違いは、主に男性側の性的な視線ではないでしょうか。

 ちなみに上述した『OUT』では、協力して死体を遺棄したはずが、すぐに不協和音が生じ始めます。DV夫から解放された妻は傍目にもわかるほど浮かれ、リーダー格のメンバーを邪見に扱いだします。あるメンバーは、もっと金をよこせと騒ぎだします。この変化を裏切りというのは簡単ですが、環境によって言動が変わるのは当たり前であり、変わらない女性はいないと私は思っています。

 若い女性は裏切って、おばさんなら裏切らないということはないのです。

 おばさんの深情けが強調される本作ですが、最終回まで残りわずかとなってきました。しのぶの子どもの父親は、本当に吾郎なのか。しのぶは冤罪なのか。今後、明らかにされるであろうドラマの肝をしっかり見届けたいと思います。

(文/仁科友里)

<プロフィール>

仁科友里(にしな・ゆり)

1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。近刊は、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)