ほかにも、花を見ながら散歩できるイングリッシュガーデンを開園したり、市内循環バスの料金を安くして利用を促しマイカー移動より歩く機会を増やそうとしたり、街中の商店街に銭湯を作り徒歩での集客を目論んでいる。

「明確に市民の歩数が増えたとするデータはありません。ただ、1人あたりの後期高齢者医療費が、'10年度で約74万円だったものが'14年度には約72万円に減りました。今後は、30代以下の若者にも、運動習慣の啓発を行っていきます」(同・担当者)

睡眠の質と呼吸を知る

 睡眠に着目したのは、神奈川県川崎市だ。同市次世代産業推進室は、睡眠の“見える化”に取り組んでいる。パラマウントベッドが開発した『眠りSCAN』を使い、睡眠時の状態を計測するのが狙い。

川崎市で実験的に貸し出された『眠りSCAN』
川崎市で実験的に貸し出された『眠りSCAN』
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「シート型のセンサーで、布団やマットレスの下に敷くと、微弱な振動から睡眠状態や呼吸数などを知ることができます」と同室担当者。昨年10月にセミナーを開き、市民や薬剤師など159人に無償で貸し出し実証実験を行った。

「利用者の満足度は非常に高く、生活習慣の問題がわかったり介護の問題点が判明した人もいます」と担当者。

 4月からは薬局などで、有償で貸し出す予定だという。地方自治体の健康向上の取り組みはさまざまだが結局、参加するのは住民次第。「個人の意識の改善が重要」というのが、担当者の一致した見方。

 弘前大学大学院医学研究科の中路重之特任教授は、個人の意識改善に取り組んだ長野県の勝因をあげ「長野県が長寿県となったのには、健康の人材育成を行ってきたことが大きい」と指摘。健康に関する知識を持つ人が徐々に増え長寿県に変貌できたという。

「健康づくりは長い期間をかけてやっていくものです。地域住民、産業、学校、行政が一体となって推し進めていく。子ども時代からしっかりと教育することも大事です。国が国民の健康の面倒をみない時代は来ます。自分の健康は自分で管理する。手遅れになってからでは遅いのです」

 と中路特任教授は、強い口調で訴え続ける。

「日本は、世界的に見て長寿国です。その中で最下位の青森県が長寿県になれば世界が注目します。時間はかかるでしょうが、人類の健康づくりの未来が青森県にかかっていると私は思っています」

 20××年、青森県が長寿県に変貌すれば青森県は世界のモデルケースになる。