好きな本を語り合える生涯の友を見つけたい「みんなの読書会」

 いま、ビブリオバトルとは別の形で読書体験をシェアしようと人気なのが「読書会」。参加者同士が本について感想や意見を言い合い、交流を深める。こんな催しが各地で行われている。

「もともと本が好きで出版業界で働いているのですが、ふと“本の友達”が少ないことに気づいたんです」

 と言うのは、『みんなの読書会』主宰の川崎祐二さん(※崎は大の部分が立)。小説から絵本まで読むブッククラブで、書店などとのコラボ企画も行う。

『みんなの読書会』主宰の川崎祐二さん
『みんなの読書会』主宰の川崎祐二さん
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「出版業界の中でも本のことを話せる友達が少ないのに、はたして、そういう人はいるのかなと」

 そんな興味からある読書会に参加したのが4年前。疑問を感じながらの初参加だったが、意気投合した人がいた。

読書会が終わったあと、そのまま飲みに行って盛り上がって。そこから彼と、“自分たちでも読書会やろう!”ということに」

 最初の参加者はたった3人だったが、知り合いやSNSでの呼びかけで輪が拡大。月2回ペースで続け、いまでは80回を超えた。

「最近では、映画の公開に合わせて課題図書を選ぶことも多いですね。去年は映画の公開に合わせて、遠藤周作の代表作『沈黙』の読書会をやりましたが、60人以上の方に参加していただいて大盛況に。もちろん、初対面の人と話すことになるので、最初はみなさんモジモジしていますが、そのうち打ち解けていきます」

 川崎さんは参加者がなるべく多くの人と知り合いになれるように、グループを30分ごとにシャッフルするなど気を配っているそう。

『みんなの読書会』の様子
『みんなの読書会』の様子

 取材時の課題図書は公開中の映画の原作『伊藤くんA to E』。自意識過剰で無神経なイタい男と彼に翻弄(ほんろう)される女性たちを描いた恋愛ミステリーだ。東京・東上野の書店『ROUTE BOOKS』で開催され原作者の柚木麻子さんのビデオメッセージも流れた。

 最初はモジモジしていた参加者も「あのシーンでは思わずうなずいちゃった」「わかりますー!」と次第に熱を帯び始め、しまいには課題図書に絡めて自身の恋愛エピソードも飛び出すなど大盛り上がり。

読書会に参加する目的は本の友達を増やすことと、読書体験を共有すること。一生続くような友を見つけることもできると思います」