人間でなければできないこともある

 一方、鳥海准教授は、「技術的には代替可能でも、人間が“人にやってほしい”と思う作業は残るのでは?」と指摘する。

「例えば、いまの技術があれば新幹線に運転士がいなくても安全に走行させることはできるけど、乗客からすると、無人運転というのは不安になりますよね。医療現場でも、機械が手術したほうが成功率が高いというケースもある。しかし、患者さんの立場からすると、完全に機械に身をゆだねるのは心配に思うでしょう」

 名物販売員やミュージシャン、漫画家、ファッションデザイナーなど、カリスマ性やブランド価値を持っている人たちの仕事も、機械による代替はきかないという。

車間距離を測ることで可能になった自動運転

 絵画や音楽などのアートや、広告企画などクリエイティブ系の業務も、コンピューターにはできないといわれている。しかし、「クリエイティブな仕事こそ、実はAIの得意分野なのでは?」と山田教授。

「どんなに創造的に思われるアイデアでも、既存の組み合わせから成り立っています。莫大なデータから情報を見つけて組み合わせるのは、AIの最も得意とする分野。すでに大量の譜面データを学習して自動作曲するAIは続々と誕生しています。ただ、その曲が人を感動させることができるかの判断はまだAIにはできないんです」

 常識やユーモアなど感覚的なものを扱うのも、AIは苦手。学校の先生や保育士といった教育の面など、人間でなければできないことは、まだまだある。そのためにAIを過剰におそれたり、また反対にバラ色の未来ばかり想像していると、誤解を招く。

「“AIによって仕事がなくなるのでは?”とおそれる人もいるとは思います。しかし、どんな職業でも、人間が判断したり作業したりしなければならない部分は必ずあるので、AIが仕事のすべてを奪うというのは考えにくい。

 人手不足が深刻になる一方で、AIを導入することによって、効率化を図れる仕事はたくさんあります。AIは私たちの生活をアシストしてくれる便利な存在にすぎないんです」(山田教授)

 どんなに素晴らしい技術であっても、使わなければ宝の持ち腐れ。それが人や社会に役立てられるかどうかは、使いこなす人間次第といえそうだ。