だらしなくてダサい役が自分とリンク

 池岡さん演じる正哉は、父親の事故で自分の意識に変化を感じるものの、すべてが中途半端な青年だ。親からの自立を決意するもしきれず、彼女(上白石萌音さん)と別れたと言いつつ離れられない。

池岡亮介 撮影/森田晃博
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「本当に普通のやつなんですけど、僕は“こんなウジウジした男にはなりたくない”と思ってしまっています(笑)。自立しようとするところにはすごく共感できるんですが、それも“自立することがカッコいいと思っているだけなんじゃないか”というダサさが見えてきて(笑)。でも正哉のことをだらしないとか卑怯とか言っているのは、僕自身が自分に言っているところもあるのかもしれない。

 今、僕もちょうどいろいろな環境が変わってきていて、すごく合致するんです。“自立しなきゃな”と本当に思っていたり。そういう考えに至ったのも、この脚本があってのことかもしれないですし、そう思っている自分のところにこういう役が舞い込んだのかもしれないと思います」

 正哉は思い悩む中、“俳優になりたい”という夢をあきらめる(中途半端にだが)。池岡さん自身が俳優を夢見ていたころのこともリンクするのでは?

「いや、僕は“俳優になろう”と思ってこの世界を目指したわけではないんです。高校時代、部活を退部してしまい、勉強に打ち込むしかなくなっていたとき、母が見かねて事務所のオーディションを受けるよう仕向けてくれたことがきっかけでした。それで“俳優になりたい”というワンステップを飛び越えてしまったから、“俳優でいる”ことへの執着心、貪欲さがまだ足りていないと自分でも思いますし、周囲の方にもよく言われるんです。

 そういう自分へのもどかしさも、実は正哉とリンクしている部分ですね。僕は後回しにするのがクセで、周囲に迷惑をかけていますし、よくないと自覚しているのになかなか直せないんです。正哉と僕は、影響を与え合っているのかもしれないと思うところがけっこうあります」

 この作品に参加することで、池岡さんの芝居に対する執着心、貪欲さに火がつく予感も。

火をつけたいですね。竹中さんや生瀬さんは毎回違うことをされるので“そんな動き、どこから思いつくんだろう?”って驚くばかりで、その発想力がうらやましいと思うんです。どうやったら面白くなるか。大事なのはそこなんですよね。稽古に入って思い知らされたんですけど、まじめにやりすぎちゃダメなんだなと。

 みなさんがどれだけ遊び心を持ってやっているかというのを稽古場で知って、“まじめに考えすぎていたなぁ、僕に欠けているのは遊び心だ”と痛感しました。勉強するだけじゃなくて、僕がこの作品に役に立てることをちゃんと追求していきたいと思っていますが、それをクリアしたうえで、千秋楽までどれだけ遊び心を持てるか、面白がってできるか。そればっかりを考えていられるようになっていたいです!」

『火星の二人』

<出演情報>
『火星の二人』
 生瀬勝久さんが「竹中直人さんと芝居がやりたい!」と欲したことから生まれた演劇ユニット「竹生企画」の第3弾。作・演出は前2回と同様、倉持裕さん。大事故から奇跡的に生き延びた男(竹中)の家に、同じ事故から生還した男(生瀬)が訪ねてきたことから起こる波乱を、絶妙なセリフの応酬で描く。4月10日〜25日、東京・シアタークリエにて上演。その後、大阪、愛知、富山、石川、長野、宮城、岩手、栃木、新潟、香川、広島、鹿児島、長崎、福岡を巡演する。

<プロフィール>
いけおか・りょうすけ◎1993年9月3日、愛知県生まれ。2009年にデビュー後、舞台・映像などで幅広く活躍。主な出演作品は、舞台『十二夜』、『柔道少年』、『関数ドミノ』、主演映画『1/11 じゅういちぶんのいち』、ドラマ『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』、『本日は、お日柄もよく』、『沈黙法廷』など多数。

<取材・文/若林ゆり>