テレビへの挑戦はものすごく怖かった

 今回、ヴォルフガング役を分け合う古川雄大さんは、山崎さんの『モーツァルト!』を見て、この役に憧れてきたという。

山崎育三郎 撮影/伊藤和幸
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「雄大は僕をすごく先輩扱いしてくるんですけど、2歳しか変わらないんですよ。でもね、初めての本読みで1幕が終わったとき、雄大が“俺、もう無理っす”って言った、その感覚がものすごくわかる(笑)。僕も初演の初日は1幕終わった後、立てなくなるほどだったから。雄大には“それを乗り越えたらすごいものが待ってる、自分自身が変われるから”と言っています。雄大にとってよかったと思うのは、今回、演出が大きく変わるということ。僕はできあがったものに自分を当てはめていく苦しみが大きかったけれど、ゼロから僕らの世代の『モーツァルト!』を作っていく戦友という感覚でできますから」

 また4年ぶりとなる今回は、山崎さんがこの4年間に積んだ経験が色濃く反映されることだろう。テレビなど、映像の世界にチャレンジした経験も大きい。

「いままで2年、3年先までミュージカルのスケジュールが決まっている中で仕事していたのが、全部それをなくしての挑戦はすごく怖かった。これまでに僕たちの世代でミュージカルをやりながら本格的に映像をやるという人はいなかったから、どうなるかわからないし。それでも挑戦したのは、特に若い世代の人たちにもっとミュージカルを身近に感じてもらいたい、興味を持って、触れる機会を増やしてほしいと思ったから。

 自分が決めた道を、責任をもって突き進んでいくという意味ではヴォルフガングにも通じるかな。僕は自分の知らないことに興味が向くし、常に燃えていたい、チャレンジしたい、安定したくないんです(笑)。結果、自分という役者の幅や世界がすごく広がったし、映像で僕を知ったお客様がミュージカルを見てくださることにもつながったと思っています」

 豊かな経験を経て成長した山崎さんが見せる、新たなヴォルフガングはどんなものになりそう?

「とにかく“これが山崎育三郎!”というのをすべて出し切ります。4年前とは感じるところが変わってきていたりして”ここで泣けるんだ“とか、再発見が面白い。家族への思いという部分に心が動くので、特に大事にしたいです。そのうえで、なくしたくないのが”純粋さ“。お客様には限界まで挑んでいる自分を見ていただいて、それに何を感じるのか逆に聞きたいです。

 テクニックではなく、その人のもっている何かが求められる芝居だと思うんです。その人自身の人生や運命、背負っているもの、奥底からの思いや感情がすべて飛び出して見えてくる。それができて初めてヴォルフガングと言えるから、もう、闘いです!(笑)」

<出演情報>
『モーツァルト!』
『エリザベート』のクンツェ(脚本・歌詞)&リーヴァイ(音楽・編曲)コンビが天才音楽家モーツァルトを描いた、ウィーン発の傑作ミュージカル。今回は新演出となり、ヴォルフガングの妻、コンスタンツェ役は平野綾・生田絵梨花・木下晴香のトリプルキャストが演じる。5月26日~6月28日 東京・帝国劇場、7月5日~18日 大阪・梅田芸術劇場、8月1日~19日 名古屋・御園座で上演される。

やまざき・いくさぶろう◎1986年1月18日、東京生まれ。'07年、『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢。主なミュージカル出演作に『モーツァルト!』『ミス・サイゴン』『プリシラ』『エリザベート』など。また、ドラマ『下町ロケット』の真野賢作役や実写映画『美女と野獣』で野獣の日本語吹き替えを担当するなど、映像や音楽の世界へも活躍の幅を広げている。

<取材・文:若林ゆり>