羽生や宇野以外に、田中刑事や友野一希などの若手も台頭しているが、高橋は彼らとの対峙について、「自信がついたら食らいつきたい」と少々控えめ。しかし、彼にも2つの“追い風”があるようだ。

今季も男子の世界選手権出場枠は3枠。平昌メダルコンビがそのまま出場枠をさらうか、あるいは……
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1つ目は男子フリーの競技時間が4分に短縮されます。30秒短くなることで、体力が落ちていたぶんがラクになるかもしれません。

 2つ目は、ジャンプの基礎点と出来栄え点の見直しです。4回転ジャンプの基礎点が下がり、出来栄え点が従来の6段階評価から11段階評価になりました。高橋くんくらい素晴らしいジャンプを跳ぶことができれば、点数も稼ぎやすくなります」

 ただ、羽生と宇野のジャンプは別格だと佐野さんは語る。

「この2人は4回転ジャンプの種類も豊富で、特に羽生くんは美しいジャンプを跳ぶことができます。4回転の価値自体が下がるとはいえ、出来栄えという付加価値がつくため、より差はつきやすくなると思いますよ」

スポーツ選手のピークは28歳まで

 “フィギュア王国”とも呼ばれる愛知県名古屋市でフィギュアスケーターのほか、野球やゴルフの選手に特化したトレーニングなども行う『プラストレーナーズ』のスポーツトレーナー・柴田達也さんによれば、高橋と若い選手との間には、年齢による壁が多少あるという。

「肉体的な意味では、筋肉をつけるなどのトレーニングでカバーすることができます。でも、筋力と同じくらい大切なのが“感覚”。いわゆる神経系は、筋力よりも年齢によって衰えやすいのです」

『運動神経』という言葉はよく聞くものの、“神経系”は聞き慣れない言葉。いったいどういうことなのか。

スポーツ選手は一般的に、20代前半から25歳が肉体的なピーク、精神面も含めると28歳ごろまでがピークと言われています。“神経系”とは脳から神経を通じて筋肉に指令を送るスピードや感覚のことで、主に、瞬発力やバランスなどが挙げられます」(柴田さん、以下同)