大水槽もない、イルカもペンギンもいない、1962年建築という国内屈指の古さ、狭さ……。にもかかわらず、愛知県蒲郡市にある『竹島水族館』がいま絶好調だ。

閉鎖寸前から大人気スポットに!

 '16年には39万8000人が訪れ、休日ともなれば館内に人が入りきらないほどの行列ができる。今年の目標は43万人だが、達成できそうな勢いがあり、県外から足を運ぶ客も多い。「名前の難しい魚展」などユニークな展示でも知られている。

 そんな同館も、わずか8年前には12万人ほどの来場者しかなく、閉鎖寸前の状態だった。

「小さくて汚くてボロくて……と、ネガティブな要素しかなかった」

 と副館長の戸舘真人さんは振り返る。できることからやろう。まず、老朽化した回遊水槽はなくして、海の生き物を触れる“タッチプール”を設置した。

「多すぎて持て余していたイガグリガニ、タカアシガニ、オオグソクムシなどの深海生物を、来館者にじかに触れてもらえるように変えたんです。プールは深海と同じ環境を保ち、生物保護の観点からあまり長い時間は触れられないよう、生き物たちをこまめに交代させることで、ストレスを緩和させています」(戸舘さん、以下同)

魚の生態をユニークに表現した「魚歴書」などの手描きポップ。魚たちを横目に、ジーッと読み込む人が続出

 折からの深海魚ブームも追い風となり、好評に。

「それから、魚名を記しただけの表示を、スタッフ手描きのポップに変更しました。飼育員しか知らない裏話やおもしろネタを描いたのですが、これはすぐにできることだし、何よりもお金がかからない。でも本音を言うと、生き物を見て、興味を持ってもらうことがいちばん大事だというモットーがあるから、ポップに力を入れたのです」

 竹島水族館の名を一躍広めたのは「坊主頭宣言」だ。

「蒲郡市の人口が8万人、2度来てくれたら16万人。“来館者が延べ16万人に達成しなければスタッフ全員を丸刈りにします!”と宣言したんです」

 これがネットで大きな話題を呼び、マスコミにも取り上げられ、以来、口コミで来館者が増えていった。唯一の海獣であるアシカショーは、派手さはないしスペースも狭いが、ステージとの距離が近いのがウリ。館長も、通常業務に加えアシカショーをバリバリこなすから驚きだ。

タカアシガニやナヌカザメ、オオグソクムシなど、生きている深海の生き物に触れるタッチプール

 それから、スタッフ発案のカピバラショー。気が向かないと1ミリも動こうとしないカピバラの“やる気なし加減”がおかしさ満点で、温かな笑いを誘う。

「水族館のスタッフは生き物の世話係ではありません。飼育ができるのは当たり前のことで、生き物をいかに魅力的に見せて、興味を持って見てもらうかが大事だと思っています」

 水族館は総じて薄給だが、業績に合わせて、待遇も以前よりアップ。人材育成にも真剣に取り組んでいる。

 大水槽がなくても、人気生物に頼らなくても、生き物への愛とアイデアにあふれる竹島水族館の成功は、水族館の新たな可能性を感じさせてくれる。